大井川通信

大井川あたりの事ども

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

退職祝

儀式など儀礼的なことが苦手である。わかった上で嫌だというのではなくて、どういう匙加減でしたらいいのかわからないから、苦手意識があるということだと思う。まして、自分が主催して、友人・知人に声をかけることを考えたら恐怖だった。 結婚式など特に避…

本の力

定年前最後の職場では、比較的自由のきく立場だったから、仕事に関係のある本を自分のデスクの後ろの書棚に並べるようにした。 基本的に新しく読んで、仕事に少しでも掠る内容の本を、読んだ順番に並べていく。二年間で並んだ本は100冊くらいだったけれども…

何よりもダメな男

学生の頃、評論家の菅孝行が好きで、彼の雑文集『何よりもダメな日本』を愛読していた。表題は、エンツェンスベルガーの『何よりもダメなドイツ』からとったものだったと思う。 管は、まっとうでまじめすぎるような左翼の批評家で、そのためかバブル以降の論…

クレジットカードがわからぬ男

定年本で、退職するとクレジットカードの審査が通りにくくなるから、在職中につくっておいた方がいいというアドバイスがあって気になっていた。 それで、なんとか息子の助言を受けて、自分の銀行口座で某社のクレジットカードを作ってみた。ネットで手続きも…

『にぎやかなえのぐばこ』 バーブ・ローゼンストック(文)メアリー・グロンブレ(絵) 2016

副題は「カンディンスキーのうたう色たち」。原著の出版は2014年。 僕は、美術館で出会う名画の中で、カンディンスキー(1866-1944)の描く絵がなんとなく好きだった。抽象画であっても、色も形象も明るく楽しく、生き生きとしている感じ。抽象画が埋まれる…

スマホがこわい男

定年後にむけて暮らしをダウンサイジングしないといけない。これは昨夏以来、ある程度すすめてきた。新聞購読をやめ、ほとんどの保険をやめた。しかし、スマホなど通信費の見直しについては、その経費の大きさから重要な課題であるにもかかわらず、今にいた…

『木はいいなあ』 ユードリー(作)・シーモント(絵) 1976

原著は、1956年。木というものの良さを、見開きのページごとの場面で、次々にうたいあげている。絵も名もなき木々のように素朴でシンプル。 「木がたくさんあるのはいいなあ」「たった一本でも木があるのはいいなあ」「いえのそばに大きな木があるといい」 …

『ホンドとファビアン』 ピーター・マッカーティ 2003

図書館で、思いつくままに何冊かの絵本を借りてくる。そのうちの一冊。 とある家で飼われている猫のファビアンと犬のホンドが主人公。二匹は、ふだんはそれぞれお気に入りの、窓枠の上と床の上で眠っている。 ホンドが飼い主に連れられて、海岸で犬のともだ…

やせない男

昨年5月にコロナに感染した。今は第6波の終息がみえないところだが、当時は第4派。オミクロンなんてやわな株が蔓延するまえで、まだワクチンもない状況だった。 最悪のデルタ株に出回る直前だったが、僕たち家族が感染したのは走りのデルタ株だったと思っ…

牡蠣フライにあたる男

だいぶ前に、生ガキでも焼きガキでもなく、カキフライ定食の牡蠣にあたったことがある。冗談のようだが、その時の症状からみて間違いないと思う。 今回も間食禁止の禁を破って、スーパーでカキフライ三つの半額パックを購入し、店内でパックを開封し、三つを…

パソコンが苦手な男

毎日ノートパソコンと向き合って仕事するという生活をもう何十年も続けているが、そのつど必要最低限の機能しか覚えないから、まったく上達しない。これはプライベートでも同じ。いまだに文字だけのブログを書くのが精いっぱい。 40年近く前に会社に就職した…

片付けられない男

今は実務から離れてしまったけれども本業は事務屋さんなのだが、とうとう最後まで書類を扱うのが苦手なままで終わってしまった。紙から電子データへと移行した時代だが、旧態依然たる職場なので、最後まで紙の情報が主役だった。 情報を加工するという実務に…

浅田彰の逃走

僕は、現代思想ブームのさなかの1984年に大学を卒業して、企業に就職した。その前年の秋に浅田彰の『構造と力』が思想書としては異例のベストセラーとなり、近所の一橋大学の講演で彼のさっそうたる姿を見ることができた。『逃走論』の出版は、僕の就職直前…

父の子守歌

ねんねんころりよ/おころりよ/ぼうやはよい子だ/ねんねしな 室生犀星の詩集を読んでいたら、「おころりころりをうたへり」という詩句があって、初めは何のことか見当もつかなかったが、すぐに有名な子守歌のフレーズだと気づいた。さて「おころり」ってい…

つばめが来る日

3月13日に、近所の旧街道の商店街で車を走らせていると、くるりと糸をひく鳥の影があって、あっ、つばめだ、と思った。ツバメの来た日は、日記などにメモしておくこともあり、たいてい3月の中旬の今頃である。 僕はまんぜんと季節のあれこれを迎え、また…

吉本を読まない横超忌

今日は、吉本隆明の忌日だから、薄い本でも詩集でも読むつもりだったが、忙しさにかまけてそれもできなかった。吉本が亡くなって10年。あれほどの存在感もやや薄れつつあるということか。 僕が吉本を読んだのは、上の世代とのコミュニケーションをとるためだ…

多摩川の思い出

すこし前に多摩川の本を読んで、子ども時代の多摩川のことを思い出した。 多摩川は、実家から直線で3km近くあったから、小さな子どもにとって簡単に行ける距離ではない。それでもすいぶんなじみ深いのは、川べりに市営の清化園プールがあって、幼児の頃か…

長男の誕生日

長男の誕生日だから、それを家族にふれまわって、お祝いの連絡をするように促す。僕もメールだけはする。 このところ、子育てや子どもの勉強について、簡単な相談を受けることがあって、長男の子育てを振り返りながらそれに答えた。 僕は人間が未熟だから、…

80点の謎

資格試験受験には、定年後の仕事への準備という意味合いもあるし、実際に自分の知力や記憶力がどのくらい衰えているのかを確認する意味合いもあった。 勉強は、若いころそれを本職としていた頃のイメージで行うものだろう。このくらいの試験なら、このくらい…

ITパスポート試験を受ける

いよいよ本年度最後に受験する資格試験であるITパスポート試験当日。 まるで資格試験オタクみたいな半年間だったが、実は実際に勉強するのは、30歳前後に、社労士、宅建、行政書士の試験を受験してから30年ぶりのことだ。久しぶりだからバタバタしたが、3回…

高本裕迅の基礎英語2

僕が中学生の頃は、HNKラジオの「基礎英語」と「続基礎英語」が、ネイティブの発音に触れる唯一といっていい機会だった。あと、中学教師が授業で使うラジカセのテープの音声。先生たちの発音はおせいじにも上手とは言えなかった。 両講座の内容は中学生には…

こんな夢をみた(失恋の甲板)

ぼろいフェリーのようなものに乗っていた。なんだか彼女から強く拒絶されて、傷心で船にのりこんでいた。船にのってどこかに行くことで汚名を挽回しようと考えていた気がするが、その詳細は覚えていない。 客室には段ボールが置いてあって、それをちぎって甲…

こんな夢をみた(階段の母親)

久しぶりに実家に戻る。母親が例によって元気に家中を動き回っている。 僕に何か身体にいい薬を飲ませたがっているようだ。大きなラムネのような白い錠剤が、一週間分くらいある。僕は血圧の薬も服用しているし、こんなわけのわからない薬は飲みたくない。 …

『とんでもない』 鈴木のりたけ 2016

ブックオフで比較的きれいな古書を買った。新刊書店で立ち読みした記憶があるのだが、そのときはさほど良いとは思わなかった。理由を考えると表紙の絵が違うことに気づく。 この初版では、表紙と裏表紙が、主人公の住む家を中心に住宅街を少し暗めなトーンで…

甘える老人

朝から勉強のためにカフェやファミレスに行くと、圧倒的に老人の利用が多い。杖を突きながら来ている夫婦、黙って一人でモーニングを食べにくるおじいさん。仲間で楽しそうに話す老人たち。 おそらくどの地方都市でも見られる風景なのだろう。ファミレスの店…

怒る老人

近ごろは、街中で突然怒り出す老人が多いらしい。 僕も少し前に、こんな老人を見た。スーパーのレジのところで、おじいさんが何か怒っている。近くにいって聞いてみると、自分が買おうとしたお惣菜のパックから、総菜の中身を落としてしまったことで文句をつ…

めまいと全健忘(眩暈その5)

僕には、めまいの他に、その翌年くらいに起きた一過性全健忘の発作がある。こちらは大きい発作が二度と、軽い発作が数回くらい起きている。めまいより回数は少ないが、起きた時の深刻度ははるかに大きい。 おおざっぱにいって人間の記憶は、短期記憶とそれよ…

めまいの経過(眩暈その4)

その後もめまいとの付き合いは不定期に続く。 たとえば、2007年の3月23日、4月5日、4月11日にめまいが続いたというメモがある。この時は年度替わりの仕事上の繁忙期に加え、美術プログラムと読書会の準備とめいっぱいで頑張っていたときだ。身体や精神の疲労…

めまいの始まり(眩暈その3)

はじめてめまいに襲われたのは、今から20年近くまえの2004年のことだったと思う。その前の数年が仕事が一番きつい時期で、仕事終わりが終電に間に合わないことも普通だったし、1週間の平日で合計10時間しか寝る時間がとれなかった時もあった。責任は重いが、…

めまいの近況(眩暈その2)

めまいはしばらくなかったと思っていたけれども、ざっと日記を見返すと、昨年の正月に(2020年1月4、5日)に軽めの発作が出ている。軽い場合だとあまり記憶に残らない。 その前であれば、さらに2年間さかのぼって、2018年の2月3日に強い発作が出て、朝から昼…