大井川通信

大井川あたりの事ども

本の力

定年前最後の職場では、比較的自由のきく立場だったから、仕事に関係のある本を自分のデスクの後ろの書棚に並べるようにした。

基本的に新しく読んで、仕事に少しでも掠る内容の本を、読んだ順番に並べていく。二年間で並んだ本は100冊くらいだったけれども、本オタクの僕にとって、好みの本をバックに仕事ができるというのは理想的な環境だったと思う。

僕は昔から、本を手元においておかないとダメなタイプだった。本をいつも読んでいるわけではないし、読む速度が特別速いわけでもないから、活字中毒ではない。なんとなくながめたり、パラパラめくるためだけに本をもっていたかったのだ。

子どもの時には、茶の間の食卓の席に、読む暇なんてないにもかかわず、常に本を数冊持ち込んでいたのを覚えている。今でも、外出のカバンの中には数冊の本を忍ばせておかないと落ち着かない。お守りみたいなものか。

今の職場では不思議とアイデアにめぐまれ、我ながらいい仕事をすることができたと思う。仕事と人間関係が苦手な僕が、最後の職場でなんとかそれを克服できたのは、お守り代わりの本の力のおかげだったかもしれない。

荷物の片づけの前に、僕は書棚に並んだ本の記念撮影をした。