大井川通信

大井川あたりの事ども

大井川歩き(祖先祭・民間信仰・ユートピア論)

畔上対話(啓示としての詩)

原田さんの活動が思い通りにいかないのは、自分の詩をムラづくりの中心に据えているからだ、という言葉は、賢人にとって受け入れがたいことだろう。しかし、それを黙って聞き入れる度量が賢人にはある。 ここまでのことなら、一方的に僕が賢人をディスってい…

畔上対話(ムラと方舟)

竹の杖をついて大井川の川べりを歩いていると、村の賢人原田さんが、里山に接した田んぼに軽トラを止めて作業しているのが目に入った。 田んぼの下のあぜ道から近づくので、僕の姿は原田さんには見えない。僕は、大声でいつもの「ホンニホニホニ ホンニホニ…

冬至のお祭り

同じ市にある黒住教の教会で、冬至のお祭りに参加する。実際の冬至は22日だから、参加しやすい休日に設定しているのだろう。 いつもは人気のない教会に、この日ばかりは活気が感じられる。教会長さんも神主のような上下真っ白の正装をしている。義理の娘さん…

「イエスの方舟」を聴く

職場の上司が、中洲にあるイエスの方舟の人たちのお店「シオンの娘」の常連だったことから、何度かそこに付き合わされたのは、もう10年以上前のことだ。その時は、同じ東京郊外出身の彼女らと、ローカルな情報で盛り上がった。イエスの方舟の教会がかつて国…

おなごし(女子衆)さんの思い出

村チャコで会ったワタナベさんを、大井炭鉱の坑口跡に案内することになる。石炭を運んだ道や炭鉱夫の納屋のことなど、大声で説明しながら里山に入っていくと、藪の手間で「くくり罠注意」という表示がある。イノシシのハコ罠なら知っているが、くくり罠を見…

釣川浄土(絵本を届ける)

雨も降りかけているし、午後からで時間もないし、ということで多礼(タレ)まで歩くのははばかられた。しかし、自動車で乗りつけるのはポリシーに反する。やや迷って、自転車を走らせることにした。 先日、偶然道端で挨拶をして知り合ったキミコさんの家に、…

死と自然

僕は村の賢者原田さんのことを「世界的」宗教家だと思っている。世界的なカトリック神父押田成人の弟子だったという経歴からの半ば冗談だし、実は原田さんは師匠のことをあまり評価していない。 世俗の中で、純粋な宗教的感性を維持することはとても難しい。…

ひろちゃんの旅立ち

少し前に娘さんから、ひろちゃん(吉田弘二さん)の容態が思わしくないとのメールを受ける。今年になってから、コロナ禍で訪問を遠慮していたのだが、この数か月でだいぶ体調が悪くなったそうだ。それでこのところ何回かお見舞いにうかがって、先週の日曜日…

「方舟大井丸」の出航(その2)

旧大井村で住宅街の向かいにある里山には開発の手は及んでいないが、小説の「ひばりケ丘」と同様、ミカン畑が目立っている。しかし今では採算がとれず、太陽光発電のソーラーパネルに置き換わりつつある。 しかし、この里山の地下には、かつての大井炭坑の坑…

「方舟大井丸」の出航(その1)

安部公房の『方舟さくら丸』を、ニュータウンと呼ばれる郊外の成立のからくりを描いた小説として読んでみた。ニュータウンが抱え込む闇の部分をいちはやく取り出しているからこそ、ニュータウンがオールドタウンと化して様々な問題が噴出している今でも、い…

『方舟さくら丸』 安部公房 1984

読書会の課題で読む。といっても小説を読む会ではなく、ふだん評論を読む読書会の方で、足掛け25年くらい関わっているが、小説は初めてかもしれない。難敵ぞろいの参加者だから、報告者ではないけれども、少し念入りに読んだ。読後の印象をメモしておこう。 …

大本教と八龍神社(その2)

大本教と大和良作、栗原白嶺との関係を簡単な年表にしてみよう。 ・大正10年(1921年) 第一次大本事件 ・昭和7年(1932年) 大和良作、栗原白嶺と共著出版。 ・昭和9年(1934年) 大和良作の主導で地元に八龍神社建立。 ・昭和10年(1935年) 12月第二次大…

大本教と八龍神社(その1)

地元の大井川歩きで、思わぬ場所で大本教の名前を聞いたことがある。 大井とは隣村にある地域なのだが、そこは組ごとに庚申塔が残っており、寺社も多く、古い信仰が守られていそうな集落だ。八龍神社という地図にものっている神社があるのだが、近所の人から…

十力の謎

今ではほとんど使われなくなってしまった村の小字の地名には、不思議なものが多い。いくら眺めても、口でいってみても、よくわからない。地元の小字名で、唯一自分で解明できたと思えるのが、十力(じゅうりき)だ。 大井の中でも古くからある集落で、江戸時…

雨ごいとW杯

子どもの頃、地理の授業で、降水量の少ない四国の讃岐平野にため池が多いと習った記憶がある。近所を歩くと、僕が住む地域も、小さなため池があちこちにある。ほとんど江戸時代に作られたもので、水量の豊富な川がないことが理由だろう。それでも日照りには…