大井川通信

大井川あたりの事ども

ドキュメンタリ/エッセイ

『テロルの原点』 中島岳志 2023

『朝日平吾の鬱屈』(2009)の加筆修正文庫版。 1921年(大正10年)に一代で財閥を作り上げた富豪安田善次郎を襲って自決した朝日平吾(1890-1921)の足跡と内面を追ったドキュメンタリー。朝日のテロは、原敬首相暗殺の連鎖を呼び、1930年代のテロリズムの…

ドキュメントを読む

今月の吉田さんとの読書会では、年末年始に読んだ4本のドキュメントの感想記事をもとにレジュメを作った。4本とも犯罪をめぐるドキュメントになってしまったのは僕の趣向のせいだが、教育現場を扱った『月明学校』や『山びこ学校』もドキュメントだし、『遠…

『愛することは待つことよ』 森崎和江 1999

新聞を読まなくなったので、森崎和江さんの6月の逝去を知ったのは、数か月あとだった。森崎さんは僕の家から数分の、同じ旧里山の上の住宅街に住んでいた。僕も引っ越してきて四半世紀になるから、それだけの期間ご近所だったということになる。妻も馬場浦池…

『カニは横に歩く』 角岡伸彦 2010

副題には「自立障害者たちの半世紀」とある。500ページのドキュメンタリーで読みごたえ充分だった。僕も個人的な理由から、自分自身の生き方を振り返らざるをえないような読書体験になった。 著者の角岡信彦氏(1963~)は僕とほぼ同世代。処女作の『被差別…

『夜と霧』 ヴィクトール・フランクル 1946

読書会の課題図書で読む。 感覚的には、本当にこんなことがあったのか、あったとしてもごく例外的な不幸だったと思いたい、というのが正直なところ。 しかし、周囲(自分の内外)を振り返ると、すさまじいばかりの自然の改変(破壊)と生物の組織的な殺戮、…

『苦海浄土』 石牟礼道子 1968(1972改稿)

読書会の課題図書で読む。いつかは読みたいと思っていたので、ありがたい機会だった。もっと告発一辺倒であったり、おどろおどろしかったりする作品だと思っていたが、想像していたより読みやすかった。聞き取りや記録など様々なタイプの文章をつないでいく…