大井川通信

大井川あたりの事ども

子どもの本

『おなおしやのミケおばあちゃん』 尾崎玄一郎・尾崎由紀奈 2022

先日の勉強会で吉田さんが次回は駄菓子屋論をやると予告してくれた。うれしいのだが、振り返ると東京の新興住宅街に育った僕には実はちゃんとした駄菓子屋体験がない。学校近くの二軒の小さな文具店は、食べ物やオモチャも扱っていて駄菓子屋風ではあったが…

『ないしょのおともだち』 ビバリー・ドノフリオ(文) バーバラ・マクリントック(絵) 2009

「おんなのこ支持率NO.1 ときめき100%」と帯に大きく宣伝文句が書かれていて、ふつうだったら手に取ろうとは思えない絵本だったが、持ち込みOKの書店カフェの気安さで目を通してみると、どうしてどうして、これがとてもよい本だった。 思わずこの絵本を…

『夜をあるく』 マリー・ドルエアン 2021

・原著は、2018年刊行のフランスの絵本。 闇と光の絵本。しかしその闇はおどろおどろしい暗黒ではなく、やわらかに広がるブルーだ。このブルーの闇が、全編の背景となっていて、そこにわずかに白い光が射し込んでいる。 計画通り深夜に目を覚ました家族4人が…

『しあわせなときの地図』 フラン・ヌニョ(文) スザンナ・セレイ(絵) 2020

戦争の映像で、古い町の建物や橋が破壊される場面があると、人命が失われたかどうかとは別に、その破壊行為自体をたまらなく嫌に思うようになった。 自分が歳を重ねたせいか、その古い建物を作るためにどれだけの人間の地味な仕事の積み重ねが必要だったかが…

『木はいいなあ』 ユードリー(作)・シーモント(絵) 1976

原著は、1956年。木というものの良さを、見開きのページごとの場面で、次々にうたいあげている。絵も名もなき木々のように素朴でシンプル。 「木がたくさんあるのはいいなあ」「たった一本でも木があるのはいいなあ」「いえのそばに大きな木があるといい」 …

『ホンドとファビアン』 ピーター・マッカーティ 2003

図書館で、思いつくままに何冊かの絵本を借りてくる。そのうちの一冊。 とある家で飼われている猫のファビアンと犬のホンドが主人公。二匹は、ふだんはそれぞれお気に入りの、窓枠の上と床の上で眠っている。 ホンドが飼い主に連れられて、海岸で犬のともだ…

『とんでもない』 鈴木のりたけ 2016

ブックオフで比較的きれいな古書を買った。新刊書店で立ち読みした記憶があるのだが、そのときはさほど良いとは思わなかった。理由を考えると表紙の絵が違うことに気づく。 この初版では、表紙と裏表紙が、主人公の住む家を中心に住宅街を少し暗めなトーンで…

『みならい騎士とブーツどろぼう』 クエンティン・ブレイク 1973

翻訳は2013年だから、割と最近のことだ。原著から実に40年後の出版ということになる。年表で確認すると、比較的初期の作品になるが、ストーリーもていねいに作られているし、絵もしっかり描かれていて、完成された作品という気がする。 騎士のサー・トーマス…

『ザカズー』 クエンティン・ブレイク 1998

日本版は、2002年刊行。今は品切れのようで新刊書で手に入らないのが残念。 クエンティン・ブレイクを『みどりの船』で知ってから、図書館で過去の作品をあさっているが、これは出色の出来だ。簡単で印象的なストーリーのなかに、子育てと親子関係の本質を、…

『ふしぎなバイオリン』 クエンティン・ブレイク 1968

定番の「岩波子どもの本」として1976年に翻訳出版されているが、現在では新刊で入手できない。クエンティン・ブレイク自身の絵本としては最初のものらしく、絵もストーリーも少し稚拙な感じがする。 パトリックが原題だが、その名の若者が中古のバイオリンを…

『ゆめどろぼう』 みやざきひろかず 1996

ツタヤ併設のカフェのおかげで、ようやく絵本を読む習慣がついたので、ひさしぶりに図書館で絵本をあさってみた。 図書館の絵本のストックはかなりあるから、初めはどう手をつけていいかわからない。とりあえず新刊書コーナーで真新しい絵本を借りることから…

『ヘリコプターたち』 五味太郎 1997

長男の子育ての時に、五味太郎(1945-)の『さる・るるる』という作品を見つけて気に入っていたが、今手元に残っていない。ナンセンスなコトバ遊びだが、忘れがたい絵本だ。 近ごろの絵本活動で、本屋で五味太郎の他の絵本も手に取ってみるのだが、やはり突…

『ケチャップマン』 鈴木のりたけ 2008

鈴木のりたけ(1975-)は、『ねるじかん』で知った。そのあと、本屋や図書館などでいくつか作品をのぞいてみた。達者な人で、いろいろなパターンの作品を描いていることを知る。ただ人物の顔立ちとかキャラクターの描き方とかで、感覚的になじめないところ…

『すてきな 三にんぐみ』 トミー・アンゲラー 1962

今参加している読書会主宰のニコさんが、ずいぶん前、紹介形式の読書会を企画したことがあって、その時彼女が紹介していた本。 絵本は立ち読みですぐ読めたが、「愛蔵ミニ版」という手のひらサイズを見つけて、気に入ったので今回購入した。絵本は本来大きな…

手作り絵本「かさぼとけさま」あとがき

駅に近い田んぼの一角に、石材を無造作に寄せてコンクリートで固めた場所があって、以前から気になっていました。よくみると、六面に地蔵のようなものが彫られた石の塔身が二つあって、かたわらには大きな丸い石がたてかけてあります。いわゆる六角地蔵とい…

ついに『いやいやえん』を読む

子どもの頃、中川李枝子(1935-)の童話『かえるのエルタ』(1964)が好きだった。物語だけではなく、実妹の大村百合子(1941-)の描いた挿絵の子どもたちが何とも魅力的だった。 『かえるのエルタ』もまだ新刊書として版を重ねているけれども、この二人の…

『よるのねこ』 ダーロフ・イプカー 1988

絵本では、いろいろな生き物が主人公になっている。大人が読む小説の主人公が人間以外であることはまずないだろう。この対比に気づいたとき、それがとても不思議だった。子どもにわかりやすく、親しみをもてるように? しかし、なんで、自分たち以外の種族が…

『きたかぜさま』 星野なおこ(文)・羽尻利門(絵) 2021

タイガー立石の絵本に続いて、月間「こどものとも」の新刊を購入した。福音館のこの雑誌はおそらく昔からあって、この月刊誌から一部の作品が単行本化されるというシステムをばくぜんと知ってはいたが、子育ての時も雑誌まで手にすることはなかった。 絵本の…

クェンティン・ブレイクを深堀する

閉館近くの図書館に駆け込んで、閉架に保存されたクェンティン・ブレイクの7冊の絵本の閲覧をカウンターにお願いする。出してもらった本にさっと目を通すと、全体的に水準は高いが、『みどりの船』のような作風の作品はない。次の3冊は書庫に返すことにした…

クェンティン・ブレイクの絵本をささっと探す

絵本はまるで素人だから、手探りでいい本を求めていかないといけない。『みどりの船』がとてもよかったけれど、書店にはブレイクの絵本はこの一冊しかなかったので、図書館に探しに行く。 検索機で探すと、9冊ある。ただし大半が閉架にあるので、今日はとり…

『みどりの船』 クエンティン・ブレイク 1998

いつものブックカフェで偶然手に取った絵本。あまり良かったので、次に立ち寄ったときには買ってしまった。 美点はいくつもある。大判で水彩の絵がとてもいい。森の緑の描写。主人公である船は、見開きをたっぷり使って堂々と描かれる。一見船に見えるが、船…

『なまえのないねこ』竹下文子(文)・野田尚子(絵) 2019

猫を飼うようになってからは、猫を主人公にした絵本がどうしても気になってしまう。 しかし、そもそも絵本にはなんでこんなにも動物たちが多くでてくるのだろう。猫や犬については、ペットとして家族目線でふだん見ているからわからないでもないが、登場する…

『ワニくんのレインコート』 みやざきひろかず 1989 

【オンラインビブリオバトル プレゼン原稿】 皆さん、お元気ですか。僕は、運悪く一か月近く入院していて、先週ようやく退院したばかりのところです。一時は、相当悪くなって、半ばもうふだんの生活には戻れないという覚悟をしたくらいでした。ただ病気をし…

『かえるのエルタ』 中川李枝子 1964

僕が子どもの頃に持っていて、繰り返し読んで、おそらく今でも書店に並んでいる名作童話。カエルの話なので、何十年ぶりかで読み直してみる。 どうしてこの話が好きだったか、あらためてよくわかった。物語の不思議さと面白さ、言葉の魅力が詰まっている。 …

『だるまちゃんとかまどんちゃん』 加古里子 2018

加古里子(1926-)が50年にわたって書き継いでいるだるまちゃんシリーズの最新作3冊の内の一つ。僕自身の幼児期にはまだ書かれていなかったが、息子たち二人はまちがいなくお世話になった。 だるまちゃんの不思議な友達は、火の守り神「かまど神」をモチ…