大井川通信

大井川あたりの事ども

『ゆめどろぼう』 みやざきひろかず 1996

ツタヤ併設のカフェのおかげで、ようやく絵本を読む習慣がついたので、ひさしぶりに図書館で絵本をあさってみた。

図書館の絵本のストックはかなりあるから、初めはどう手をつけていいかわからない。とりあえず新刊書コーナーで真新しい絵本を借りることから始めるのだが、それが自分の気に入る絵本である確率はとても低い。今まではそれで挫折することを繰り返してきた。

何人かの好みの絵本作家の名前も覚えたから、それで検索することができる。あらためてながめると、古ぼけた図書館の書棚が絵本の宝庫であることがわかる。閉架の蔵書だってあるのだから。

まずは、以前から好きだった作家みやざきひろかずの絵本を借りてみる。柔らかくて、淡くて、単純でかわいらしい平面的な絵とキャラクター。思い切った設定とすっきりしたストーリー。他人の夢の中に入り込んで、ごちそうをいただくという主人公の泥棒はにくめない。

しかし人の見る夢は、食べ物の夢ばかりではない。泥棒は失敗ばかりでお腹をすかせるけれども、ストーリーの中で、子どもたちに人々の様々な夢の世界を案内するという趣向だ。作者の中では、まずまずの作品だと思った。

ところでみやざきひろかずを知ったのは、二十年以上前に、近所のスーパーの中のごく小さな書店で、彼の作品『チョコレートをたべたさかな』が平積みで売られていたからだった。

最近、隣町の大きなモールの中の大型書店の児童書コーナーで、同じ本が目立つように立てかけて何冊も売られているのを見た。知る人ぞ知る傑作だから、きっと新しい出会いがあるだろう。新刊書店の目利きの存在というのはありがたい。