大井川通信

大井川あたりの事ども

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『生き神の思想史』 小沢浩 1988

2010年に岩波人文書セレクションとして再刊されたもの。副題は「日本の近代化と民衆宗教」。小沢浩(こざわひろし 1937-)氏の本では、『国家神道と民衆宗教』がよくまとまってわかりやすく、僕が金光教に好感をもったのもこの本の記述の影響が大きい。 し…

へびゴマ物語(その4 大団円)

久しぶりにネットでへびゴマの検索をしようと思いついたのは、虫の知らせがあったからか。手元にあるプラスチックの新しいへびゴマなら市場に出回っているのはわかっているが、もしかしたら別のへびゴマが見つかるかもしれない。 そうしたらなんと、あの思い…

へびゴマ物語(その3 へびゴマはリゾームか?)

おっさんちは国分寺崖線の段丘上にあったので、僕たちがそこに行くにはどこかの坂(有名な「たまらん坂」もその一つ)をのぼらないといけなかった。 おっさんちのあたりから国分寺崖線を東にたどると、3キロほどで、東京経済大学のキャンパスにぶつかる。崖…

へびゴマ物語(その2 ついに発見!)

まだおっさんちのお店の建物が残っているうちは、あの中にへびゴマのおもちゃが残っているかもしれないから、なんとか入れないかと考えたりした。大人になって東京を離れたあとも、深夜のおっさんちに侵入する夢を未練がましく見ることがあった。 やがて観光…

へびゴマ物語(その1 おっさんち)

僕は東京郊外の新興住宅街に育ったためか、典型的な駄菓子屋を知らずに育った。そのことに気づかされたのは、別府浜脇温泉で育った同世代の吉田さんと話していたときだ。 整然と区画整理された町のいくつかの商店街には、それぞれ個性的なおもちゃ屋さんがあ…

さようなら、片峯さん

飯塚市長の片峯さんが今日亡くなったという報道に驚いた。とにかく精力的な人でまだ67歳。僕が仕事でかかわった人の中で、とにかく気持ちがよく、無類の魅力をもった人だった。 教育長時代に他にさきがけて取り組んだのが、小学校でのタブレット端末の配置と…

安部文集が届く

納期よりかなり早く安部本が届き、思わず声をあげる。 表紙の紙質とデザイン、そして巻頭の肖像写真とその印刷が秀逸だ。この外側の部分にプロの手が入っているために、見栄えがちがう。 白い表紙の中央より少し上目に薄いグレーの大きな長方形が横に置かれ…

こんな夢をみた(青空病とテスト)

自室の窓のすきまから見上げると、空は見事な青空だ。「青空病」という病名を思い出す。こんな青空なら精神が吸い込まれる病の原因となるだろうと納得する。 青空の下の岡にがやがや人が集っていて、その中には知った顔も交っているのだが、今日のテストの準…

出来事が沸騰する

ごくごく平凡な毎日を送っているが、何かがきっかけになって、いろいろな出来事が一時に押し寄せてくることがある。今がそうだ。他人から見れば、ちいさなさざ波に過ぎなくても、本人にとってはちょっとした事件だ。一つ一つの出来事は、それぞれ過去にそれ…

村の賢人のインタビューを決意する

村の賢人原田さんと話すようになって10年になるだろう。この間、対面で一番丁々発止の議論をしてきたのは原田さんだった。いつもではないが、批判めいたことを踏み込んで話したこともある。そういうことができるのも、僕がだれよりも賢人のすごさに感心して…

母の晩年

母親は、病気で衰えても、最期まで気丈でしっかりものだったが、認知機能に衰えを感じさせる場面もあった。 毎年お祝いをしてきた娘(姉)の誕生日を思い出せなくなったと姉ががっかりしていたが、僕も母から昔の親族の話を聞いているときに、父方の二人の叔…

読まれている記事

人知れず書き続けているブログだが、ブログ内の注目記事欄に出てくるような多少アクセスのある記事には変遷があって面白い。僕にとっては、それが過去の記事を振りかえるきっかけにもなっている。 ブログ開設から数年の間アクセスを伸ばしてくれた「北九州監…

大荷物の怪人 vs. 読書怪人

以前利用者ともめた店を避けて、隣町のジョイフルに行く。 朝の6時半。いつも吉田さんとの勉強会で使っている店なので印象はいいし、何よりモーニングのおかずの盛りが、僕の近所のジョイフルとは全然ちがう。ほうれん草もひじきも二倍はあるだろう。トイレ…

行橋詣で(9月)

雨なので、帰省中の長男に駅まで送ってもらったが、小倉駅の古本市で時間調整して、昼過ぎに行橋駅に着いた時には晴れていた。夏のような日差しのなか、教会に向かう。 街道から細い路地をのぞき込んでも、直接教会の建物が見えるわけではない。今年の3月に…

『しずかに! ここはどうぶつのとしょかんです』 ドン・フリーマン 1969

なかがわちひろ訳で2008年に翻訳されているから、原著から40年近くたっての日本語版となる。なるほど、それだけの価値のある絵本だ。 小さな女の子カリーナは、土曜の朝には毎週図書館にでかける。書棚から動物の本を選んでテーブルで読んでいるうちに、考え…

顕微鏡と望遠鏡

「他の善と自の悪とは顕微鏡にてこれを見よ。そのいかに大なるかを感ずべし。他の悪と自の善とは望遠鏡にてこれを見よ。そのいかに小なるかを感ずべし。」(引用者:表記を読みやすく変更。以下同様) 久しぶりに『清澤満之全集』を取り出して、第二巻「他力…

馬場浦池カイツブリの近況

馬場浦池では、この2,3年春のシーズンにカイツブリが巣を作ることがなかった。300年の歴史をもつこのため池で、カイツブリが営巣するようになったのがいつ頃からなのかはわからない。この近所に長く住んでいた森崎和江さんも、カイツブリの姿を楽しん…

「やっこみー」におまかせ!

久しぶりに「やっこみー」で会食する。 メンバーは三人。ヒラトモ様参道脇で農園をするアツコさん(ひろちゃんの娘さん)と、その友人で実家で老人ホームを経営するコノミさんだ。それに僕の名前を組み合わせて、この集まりに「やっこみー」というニックネー…

こんな夢をみた(パワハラ職員)

「とにかく、あがってこい!」と電話口で怒鳴られる。 どんなミスがあったのだろうか、と振り返るがとくに思い当たることはない。とにかく、こういうことはスピードが命と、いくらか情けなく思いつつも階段を駆け上がる。 ついた先は、ひろびろとしたオフィ…

ロータリーを駆ける怪人

半年ばかり前、こんなことがあった。朝の出勤時、大雨である。憂鬱な気分で歩いていると、駅の近くで、車が跳ね上げた水しぶきで下半身が水浸しになってしまった。駅のロータリーへの進入路(「東郷停車場線」という由緒ありげな正式名称)は車道も歩道も狭…

カワセミを真横から見る

夕方、大井川の周辺を歩く。土手を歩いていると、不意に目と同じ高さを、ブルーの小鳥が一直線で飛んでいく。 カワセミは、小川をのぞきこんだ時に、水面をまっすぐに飛んでいく姿を見下ろすことが多い。その時カワセミの背面は、輝くようなコバルトブルーだ…

老害を反省する

9月の吉田さんとの勉強会。通算54回目。これだけ話し合っても、吉田さんは新鮮な一面を見せてくれる。吉田さんは津屋崎の歴史に関するレジュメを提出する。波折神社、豊村酒造、玉乃井と、吉田さんの地域の歴史に関する関わりは本格的で玄人はだしだ。 僕は…

『浄土真宗とは何か』 金子大栄 2021

清沢満之(1863-1903)から直接教えを受けて、真宗大谷派では曽我量深(1875-1971)につぐ近代教学の代表選手でもある金子大栄(1881-1976)の本を読む。1966年の『真宗入門』を文庫本化したもの。 こうしてみると、両雄とも大変な長生きだ。師匠の清沢の…

『徳川家康が総理大臣になったら』 眞邊明人 2021

ビジネス小説と銘打っていて、本の作りが一見して文芸書とちがう。見出しの活字がやたらに大きかったり、大味の挿絵が見開きでのっていたりする。著者は、専門の作家ではなく、ビジネス研修講師をメインに、芝居の脚本、演出の担当もするという人だ。 まず僕…

本を速攻で処分する

定年前の二年間、ある事務所の所長を務めたとき、自分には読書くらいしか武器はないのだからと、仕事の関連本をひたすら読んだ時期がある。それを自分の執務室の書棚に読了順に端から並べていった。 読了本を背景にして仕事をするのは、自信にもなったし、多…

続続・本をならべる

本をどう整理するかが、僕にとって年来の課題だ。 絶対数を減らすのが一番かんじんなことだとはわかっているが、処分した本があとで必要になったりもするので、その選別作業に膨大なエネルギーが必要になり、時間ばかりかかって整理がまったくすすまなくなる…

ほめられたい

僕の今の職場では、目の前の机に高校の物理教師の同僚が働いている。ふだん雑談や冗談を言い合ったりする仲だが、理系に関する知識を尋ねたりすることもある。 僕は小学生の頃、近所に住む姉の友達の板橋さんから教えられて、現代教養文庫の『面白い物理学』…

なぜ高橋一郎は曽我量深を慕ったのか?

高橋一郎師のエッセイを読むと、浄土真宗大谷派の曽我量深の元に教えを聞きにいっている記事がある。当時大谷派で崇拝(神格化)されていた碩学に、いかに金光教の気鋭の教学者といえども気おくれしたはずだから、何度も足を運ぶという背景には、深い共感や…

他人のカートを戻す

もともと思想や評論が好きだったから、その関連で宗教に興味をもっていた。歳をとって生死のことを意識しだすと、さらに宗教の方に軸足に移す必要を感じるようになった。ただ、もっと卑俗なレベルでいえば「老害」対策だ。 老化して身体的、精神的なレベルが…

『写真で見る関東大震災』 小沢健志編 2003

今年は、関東大震災からちょうど100年だ。たしか、関東大震災をテーマにした文庫本をもっていたなと思い出してあちこちの書棚を探すと、ようやくこの本が出てきた。20年前のちくま文庫だから、忘れかけていても無理はない。我ながらまだまだ記憶力は大丈夫だ…