大井川通信

大井川あたりの事ども

馬場浦池カイツブリの近況

馬場浦池では、この2,3年春のシーズンにカイツブリが巣を作ることがなかった。300年の歴史をもつこのため池で、カイツブリが営巣するようになったのがいつ頃からなのかはわからない。この近所に長く住んでいた森崎和江さんも、カイツブリの姿を楽しんでいたにちがいないと思う。

岸に近く浮いている横倒しの倒木があって、先日その幹にカイツブリが巣を作っているのに気付いた。初秋の子育てになる。しかし、道路からすぐに見下ろせる場所で、落ち着いて子育てできないだろうと思っていると、倒木の別の枝の又のところに巣を移しているのに気付いた。しかしそこも条件は同じだ。

朝の通勤時にのぞけるので、カイツブリの逡巡が手に取るようにわかる。水面近くに枝を張った樹木もあるので、今までのようにその陰に浮巣を作ったほうがいいだろうと素人なりに考えていると、倒木はすっかり放棄されたようだった。

ところが何の気の迷いか、数日後には倒木の元の場所に、木の枝や葉、ごみなどを集め立派な巣を再建している。人の気配に気づくと、親鳥がすぐに水中に飛び込むのも以前と同じだ。何日か見ていると、やっぱり再び倒木の巣は放棄されてしまった。

しかしよく見ると、壊れかけた巣の中央に、隠されることもなく白く輝く卵が一つ残されている。巣とともに卵も放置されてしまったのだろう。

ごみをかき集めたようなカイツブリの巣は、親鳥のこまめなメンテナンスがないとすぐに自然にかえってしまう。次見た時には、卵もなくなっていて、巣の残骸が少し浮かんでいるばかりだった。