大井川通信

大井川あたりの事ども

『しずかに! ここはどうぶつのとしょかんです』 ドン・フリーマン 1969

なかがわちひろ訳で2008年に翻訳されているから、原著から40年近くたっての日本語版となる。なるほど、それだけの価値のある絵本だ。

小さな女の子カリーナは、土曜の朝には毎週図書館にでかける。書棚から動物の本を選んでテーブルで読んでいるうちに、考え事を始める。動物たちも本を読みたいかもしれないから、動物だけが図書館に入れる特別な日をつくったらいいな。

空想の図書館で、カリーナはその日カウンターに座っている。そこに、カナリア、ライオン、クマ、ゾウ、クジャク等々と次々とお客さんが現れて、それぞれ静かに本を読み始める。同じ場面に新しいキャラクターが繰り返し登場するのは、絵本の王道パターンだ。最後にやってきたネズミたちによって、図書館の動物たちがパニックになるというオチもおきまりだろう。

カナリアの歌でなんとかその場面をおさめたカリーナは、いつのまにか、現実の図書館に戻っている。それからカリーナは、空想の世界で仲良くなったカナリアの本を借りて、両手をパタパタとカナリアのマネをしながら家にかえっていく。

ここには、空想の世界を導く読書の魅力と共に、図書館という場所の魅力も描かれている。大好きな動物たちのために、カリーナは司書の役をかって出て、図書館に迎え入れるのだ。図書館という場所を軸として、人間と動物が等価に扱われているのが、絵本ならではの美点だろう。