大井川通信

大井川あたりの事ども

へびゴマ物語(その4 大団円)

久しぶりにネットでへびゴマの検索をしようと思いついたのは、虫の知らせがあったからか。手元にあるプラスチックの新しいへびゴマなら市場に出回っているのはわかっているが、もしかしたら別のへびゴマが見つかるかもしれない。

そうしたらなんと、あの思い出のへびゴマが売りにでているではないか。鉄製のコマもイメージ通りだが、何より黄土色の小箱が思い出のままなのだ。いかにもあの時代らしいデザインの下には、「made in Japan」の表記が。英語の読めない小学生の僕がこれをみて外国製と思ったのだろう。

お店のホームページでの昭和30年代の商品のデッドストックだという説明にも納得がいく。昭和40年代の「おっさんち」であっても、ビニール包装されたプラスチック製品が主流だった店内で、説明書きすらないへびゴマには異質な存在感があった。きっとおっさんは、たまたま当時すでにデッドストックだった限定品を仕入れて、安値で売りさばいたのだろう。一時的な入荷だから印象が強かったのだ。

とはいえ、ホームページの商品にはソウルドアウトの赤字の表示が光っている。もう少し早く検索していれば購入できたかもしれないが、まあそんなものだろう。しかしここまでのニアミスは初めてだからあきらめきれず、お店にメールを送ることにした。

せめて入手経路の情報が欲しいと書いたのだが、仮にそれがわかっても60年前のデッドストックでは実際に入手することは難しい。本当の狙いは、お店用に手元に残している分があれば譲ってもらいたいというあたりなのだが、それも正直望み薄だと思っていた。ところが、当日夜には返事のメールが来たのだ。

在庫に不良品が交じっていたために、一時的にソウルドアウトにしていただけで、商品の点検が済んだらメールで教えるので購入手続きをしてくださいとのこと。

天にも昇る気持ちになった。あとからは、商品の状態から複数購入のアドバイスのメールもいただく。買い占めてはいけないと遠慮していた僕にはありがたく、三個購入したが、実際に安定してまわるコマは一つだけだった。

数日後に届いたへびゴマを手に取ると、思い出そのままとはいえ、そのあまりの小ささに驚いた。繊細な工芸品のようで、これを無くしてしまったのはうなづける。子どものおもちゃに資源を無駄遣いできないという貧しい時代が刻印されているような商品だ。

小箱には「MAGNETIC TOP」(磁石ゴマ)という表記があり、これで検索すると主には「Magnetic Top and Snake」という名称で、海外のへびゴマのたくさんの情報がでてきて、拍子抜けした。日本の駄菓子屋のほの暗い一角にひそんだへびゴマとは違って、明るくあけっぴろげに振舞っていたので。

ともかく、僕のへびゴマ探索の50年の旅が、今終わったことになる。