大井川通信

大井川あたりの事ども

安部文集が届く

納期よりかなり早く安部本が届き、思わず声をあげる。

表紙の紙質とデザイン、そして巻頭の肖像写真とその印刷が秀逸だ。この外側の部分にプロの手が入っているために、見栄えがちがう。

白い表紙の中央より少し上目に薄いグレーの大きな長方形が横に置かれて、白抜きでタイトルと著者名は入る。裏表紙の下部には、一回り小さな黒っぽい長方形が縦に置かれて、それが玉乃井室内の安部さんの書斎の写真になっている。この大小の長方形の色合いと位置のバランスが表裏で絶妙で、まるでミニマリズム抽象絵画のようだ。

しぶく落ち着いた白の色調と適度になめらかな手触りも心地よい。一見して地味で目立たない装丁なのだが、印刷を専門とする外田さんの経験と美術家としてのセンスが光っている。

文学者の肖像写真で著名な片山写真館の飯田さんの写真がすばらしいのは言うまでもないが、オペレーター安達さんの協力によって抜群のプリントとなった。

中身については、僕が見よう見まねでワードで編集した原稿そのままだから、いろいろ不足はあるだろうが、そこは安部さんにも我慢してもらわないといけない。

さっそく、安部さんのお兄さんに連絡をとり、日の里団地のバス停で待ち合わせて、親族分をお渡しする。安部家のお寺の納骨堂の祭壇にも一部供えて、安部さんに文集完成の報告をする。

玉乃井を通じて最期まで深いつきあいのあった玉乃井プロジェクト関係者分を、古橋さんに届ける。地元の美術家の山本夫妻(陽子さんからは、あなたらしい仕事だと言っていただく)、映画会仲間の吉田さんにも届ける。

安部さんのカフェに美味しいお菓子を提供していたスモールバレーの板橋さんと、写真家の飯田さんには電話を入れた上で郵送する。

玉乃井を通じて知り合った現代美術家で、僕が個人的に連絡をとれる、諏訪さん、渭東さん、浦さんにはスマートレターで送ったけれど、それ以外の方には別のルートを考えないといけないだろう。

かつての水平塾関係者分を、20年ぶりに萩原さんに会って、ことづける。短いけれど中身が濃い話ができた。安部さんが思い入れをもっていた当事者グループとの関係にも、ようやくこれで区切りをつけた気になる。

週末には、行橋の宮田さんに東京の同人誌仲間の分をあずけて、その足で小倉に行き、外田さんにギャラリーソープで配布してもらう分を届けることになる。そこまでこぎつけたら、あとは機会をみつけてゆっくり渡してゆくことにしよう。