先日の勉強会で吉田さんが次回は駄菓子屋論をやると予告してくれた。うれしいのだが、振り返ると東京の新興住宅街に育った僕には実はちゃんとした駄菓子屋体験がない。学校近くの二軒の小さな文具店は、食べ物やオモチャも扱っていて駄菓子屋風ではあったが、やはりメインは文房具である。
近所の小さなパン屋で駄菓子を買っていたが、そこはやはりパン屋でオモチャ類は扱ってなかった。隣町の「おっさんの家」は僕たちにとっては伝説の駄菓子屋で、壁一面にオモチャは吊るされていたが、駄菓子の販売はなかったと思う。
話がずれたが、標題の絵本は、昔ながらの(僕の知らない)ちゃんとした駄菓子屋が舞台である。古くからの商店街に店を開いて、両隣は床屋とパン屋だ。「谷中ぎんざ」の看板も見えるが、実在の商店街をモデルにしたのだろうか。
駄菓子屋では人間の「はるばあさん」が店を仕切っているが、床下では、猫のミケばあちゃんがオモチャの修理(お直し)の店を開いている。ジュースのビンが並ぶ床下は、ミケばあちゃんの商売道具と古いオモチャがぎっしりと収納されていて、床上の店に負けないくらいにぎやかだ。
こんなふうに人の暮らしと動物やモノたちの存在が対等に扱えるというのが、絵本の良いところだけれども、日本家屋に床下のような出入り自由なフリースペースがあるからこそ成り立つ物語だろう。
やがて駄菓子屋に店じまいの危機が訪れる。その時、ミケばあちゃんと古いオモチャたちの活躍やいかに。