大井川通信

大井川あたりの事ども

『夜をあるく』 マリー・ドルエアン 2021

・原著は、2018年刊行のフランスの絵本。

闇と光の絵本。しかしその闇はおどろおどろしい暗黒ではなく、やわらかに広がるブルーだ。このブルーの闇が、全編の背景となっていて、そこにわずかに白い光が射し込んでいる。

計画通り深夜に目を覚ました家族4人が、街を抜けて山を登り、山頂から朝日を見るというストーリー。街灯やホテルや夜行列車の窓。星空の無数の星。懐中電灯の明かり。

それらがわずかな光の要素なのだが、最後の日の出の場面では、見開きの全面がやわらかな黄色でつつまれ、そこに白く輝く太陽が浮かび上がっていて、それまでの闇の頁と鮮やかな対照をなしている。

リズムよく頁をめくってきて、最後に読者は、この二色だけの何も描かれていない見開きに驚きを感じるだろう。紙をとじただけの絵本というモノがなしうるマジック。

図書館で借りたけれども、いつか手元に置きたくなるかもしれない美しい絵本。