大井川通信

大井川あたりの事ども

冬の霊山

通勤の途中で景色が開けた時、県境に近い英彦山の特徴あるシルエットを遠望することができる。大きく盛り上がった山塊の左隣に岩山の突起が三つ並んでいて、一目見て異様な姿に目を奪われる。さすが古くから修験の山とされているだけのことはある。(ただし、僕の住む大井と関係が深い修験の山は、県内のもう一つの霊山宝満山だ)

山頂近くまで車道が伸びていて、この夏には同僚の初盆参りで出かけたが大雨でじっくり景観を楽しむ余裕はなかった。今回、山上にある自然体験施設に勤務する知人から招かれて、冬晴れの底冷えする日に車で登山することになった。

山に入ると植林の針葉樹林が続くが、地形のもつ力や存在感のレベルが、僕の住む平地近くの山とは明らかに異なっている。施設には雪が残っていて、ぶるぶる震えながら、野外調理の焼き芋やシイタケをほおばった。そのあと15分ばかり山林を歩いて、社殿の裏に大岩のそびえる高住神社を参詣する。僕は例のごとくカラスの見分け方などを、得意げに施設の職員に解説してしまった。

施設の二階のベランダからは、岩肌を見せる鷹ノ巣山を真横から見ることができた。遠くからでも目立つ突起状のあの岩山である。大げさに言えば、アルプスの山容を連想させる迫力があった。後で調べると、ビュートと呼ばれる地形で、「差別浸食によって形成された孤立丘」がその意味だそうだ。

ふだん遠くから見ているものを間近に見ることの眩暈と感動というものがある。