大井川通信

大井川あたりの事ども

読書感想画の謎

2月の吉田さんとの勉強会で、吉田さんは「読書感想画」に関する回想メモを書いてきてくれた。僕は「読書感想画」というものは知らなかったが、吉田さんの育った別府では、小学校6年生と中学の3年間は、夏休みの宿題に読書感想画を書かせられたそうだ。吉田さんのリサーチでは、現在も大分県の公立学校でこの宿題は普通に出されているようだ。

読書好きの吉田さんは、夏休みに何冊も本を読んだものの、それをもとに読書感想画を描こうとして、はたととまどったそうだ。読書感想画ってなんだ。

読書感想文はそれまでに何度も書いてきただろう。本について言葉で感想を書くことのやり方はわかっている。そもそも感想とは、本についての印象や考えなどを言葉でつづるものだろう。それを絵にするとはどういうことか。

結局、吉田さんはどうしたらいいのかわからず、画用紙を白紙で提出したそうだ。ところが吉田さんは、自分を除く全員が、きちっと絵を描いており、それもほとんどが単なる本の挿絵みたいなものだったことにびっくりしたそうだ。

子ども時代の記憶力が桁違いに優れている吉田さんは、その時の情景をまるで昨日のことのように回想して驚いてみせる。そして、読書感想画ってわからないと、小学校6年生の夏休みの疑問を、いま現在の謎のように繰り返す。まさに吉田さんの真骨頂だ。

結局、担任の先生は白紙の画用紙を宿題とは認めずに、理屈をこねる吉田さんを叱責したそうだ。規格外の才能をもつ吉田さんが、その後公教育の現場からはじき出されていくのは仕方のないことだったのだろう。

学芸大の大村さんへのメールでこのエピソードに触れると、さっそく反応をしてくれた。大村さんも、読書感想画がわかりにくいものであることから自分のクラスの課題には採用したことはなく、仮に吉田さんのような疑問を抱えた子どもが現れたら、そのことをクラスの話し合いのための教材にしたいとのことだった。大村さんらしい丁寧で念のいった対応だ。

ところで、この話には後日談がある。読書感想画という課題についての教師と子どもたちの考え方を知った吉田さんはどうしたか。アニメや漫画好きで、中学生の頃に東京の手塚治虫虫プロを訪ねて、アニメの上映会開催の交渉をしたという吉田さんだ。中学の夏休みには、読書感想画の宿題を友人から請け負うという小遣いかせぎを始めたそうだ。友人毎に画風と題材を変えてばれないようにして。