大井川通信

大井川あたりの事ども

サークルあれこれ(その1 詩歌読書会K)

僕は月に一回、詩歌を読む読書会に参加している。初回が萩原朔太郎の『月に吠える』で2019年6月30日だったから、それ以来6年近くになる。事情があって行けない時もあるから実際の参加率は、三分の二くらいかもしれない。

主宰の神保さんは古書店を兼ねたブックバーを経営していて、福岡の文芸サークル関係では名の通った人だ。現代詩や短歌の実作者でもある。和歌や俳句の古典から現代詩、あるいは海外の詩まで選書の幅が広いので、何が課題にあがるのかが楽しみだ。

神保さんの友人で歌人の銀耳(ぎんじ)さんが常連メンバー。銀耳さんとは不思議な縁がある。数年前、彼の出身高校のことが話題になったので、僕が若い頃その高校の事務室で働いていたことを話した。すると彼が、僕のことを覚えていると言い出したのだ。事務室に奨学金の相談に行ったときに、子ども扱いせずに丁寧に対応してくれた若い事務員の面影が僕にあるという。

相手によって話し方を変えないのが僕の信条だから、彼の記憶は間違いないだろう。とはいえ30年も前のことだ。高校の事務室はやりがいの持ちにくい職場であまりいい思い出はなかったけれど、少し報われたような気持ちになった。

この二人以外に、準常連といえるメンバーが僕を含め数人いるくらい。SNSでの発信力があって顔の広い主催者にもかかわらず新規の参加者がほとんどいないのは、純粋に詩歌を読むことの需要がいかに少ないかを物語っていると思う。俳句や短歌等を実際に作る場の需要の方が一定ある気がする。

薄暗いバーでワンドリンク(食事も可)をオーダーして、古い丸テーブルを囲んで開く雰囲気も独特だ。会場が神保さんの店でないのは、自分の店では彼が酒をゆっくり飲めないからだという。課題の詩集等から各人が3作品を選んで感想を述べ、他の参加者全員の意見を聞くというやり方は、おそらく句会や歌会にならったものだろう。少人数で約二時間、めいっぱい詩歌について語り合う実に濃密な時間だ。

自分の選択についてはネタを用意できるが、他の参加者が選んだ作品には臨機応変な受け答えが必要だ。即興で詩歌の感想をまとめることについて、ずいぶん鍛えてもらったような気がする。選ぶということが詩を真剣に読む手段として優れていることにも気づかされた。

おそらく読書会が盛んになったといわれる今でも、詩歌に関して、これだけレベルが高く継続的な読書会は、全国的にもまれではないのか。詩に対して愛憎半ばの僕にとって、ほんとうに有難い会だ。

 

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