大井川通信

大井川あたりの事ども

高校の事務室で

読書会仲間のGさんと話していて、彼の出身校の話題になった。近隣の名門校で、入学時期を 聞いてみると、どうやら僕がその学校の事務室で働いでいた頃のようだ。もう30年近く前のことになる。そのことを告げると、彼の口から意外な言葉が飛び出した。あなたを覚えていますよ。

彼は、高校の事務室で奨学金の説明を受けたことがあったそうだ。まだ世の中のしくみがまったくわからない彼に対して、子ども扱いせずにていねいに制度の説明をしてくれたのが印象に残っているという。その時の事務員の面影が僕にあるということらしい。

地元の進学校だから、いろいろな種類の奨学金の募集が来ていて、僕はその事務の担当だった。後に大学在学中に芥川賞をとる作家の名前も、学生名簿の中にあったのを覚えているが、彼はその作家の二学年下だったそうだ。

仲の良かった教員の名前を出すと、彼も良く知っていて当時のエピソードで盛り上がる。図書室によく通っていたそうで、僕が図書室で知り合った学生のことも知っていた。その学生とのかかわりのことは以前ブログに書いたことがある。

僕は若いころから、ロックミュージシャンの佐野元春が好きで、誰に対しても態度を変えないオープンな語り口にも魅かれていた。海外のロックスターはたとえ小さな子どもでも大人に対するように話しかける。だから僕もそうするのさという佐野のインタビューを読んだ記憶もある。

おそらく30年前の僕も、佐野元春にならって、誰に対しても対等に話すことを心がけていただろう。読書会仲間のGさんが、高校時代に出会ったのは、まず僕でまちがいない。職業人生にはまるで自信のない僕も、こんな話には救われる思いがする。

 

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