大井川通信

大井川あたりの事ども

共通一次とセンター試験(その2)

ところで、年齢を重ねることのもう一つのメリットは、敗者復活のチャンスが必ずめぐってくるということだ。かなわなかった夢が実現する機会がひそかに訪れるということである。

昨年には、子ども時代からの夢である宮大工の真似事をする機会に恵まれたし、高校時代からのあこがれの漫画家諸星大二郎さんと会食する僥倖もあった。

共通一次試験から敵前逃亡した僕にも、リベンジのチャンスはめぐってくるわけである。7年前の長男の大学受験の時に、いろいろな経緯があって、ほぼ一年間、本腰をいれてコーチをすることになった。

僕と同じくのんびり屋の長男の学力は、高2の終わりで大学合格にははるかに届いていなかった。それでこんな作戦を思いついた。学力を底上げする時間も余裕もない。徹底して入学試験対策のみをする。それには、あらゆる情報が公開されており参考書も豊富にあるセンター試験対策をするのが一番やりやすい。

そのためにかなり無謀だったが長男の高校からは例年一桁の合格実績しかない国公立大学を第一志望にして、センター試験の成績を評価ポイントに加えてくれる地元の私立大学の合格を実際にはねらうという作戦を立てた。

スケジュール管理をするだけでなく、実際にアドバイスをするためには、自分で問題を解けないといけない。英語と国語に関しては、センター試験の過去問も、河合塾駿台の模試の過去問までも解きまくり、自分なりの解答法をつくりあげた。

センター試験の当日は雨だったと思う。最新の評論の出題が続いた現代文で、小林秀雄の文章が出題されたという情報には驚いた。長男の努力が実り、第一志望の公立大学に合格できたのは、自分のことのようにうれしかった。

実は共通一次のリベンジということだけでなく、僕にはもう一つ敗者復活戦の意味あいがあった。20代の頃、三年間塾の専任講師をしたけれども、手ごたえを十分感じられないままに今の仕事に転職してしまった。その時やり残した「受験指導」をやり切ったという意味でも達成感があったのだ。