大井川通信

大井川あたりの事ども

『飛ぶ教室』 エーリッヒ・ケストナー 1933

ケストナー(1899-1974)の児童文学の名作が読書会の課題図書になる。

ファミレスで読んでいて、涙が止まらなくなり、鼻をかんだナプキンで空いたお皿がいっぱいになった。無垢で健気な子どもと善意の大人の物語というのが、自分にはツボだということがよくわかった。

①作者が登場する→➁お話の世界が始まる→③お話の登場人物がまるで本物みたいに思えてくる→④お話の終わった後で作者が実際に登場人物に出会う、という展開は、子どもを虚構の世界に誘導するための親切な手順なのかもしれない。大人の僕にもとても魅力的に思えた。

新潮文庫にのっている挿絵がとてもいい。原著の挿絵を描いたヴァルター・トリアーのもの。子どもの読者の理解を助けるという以上の独自の世界を作っている。

7章にでてくる国語のクロイツカム先生は、まったく表情が変わらないため、生徒たちには少し怖いと思われているが、真面目な顔で面白い発言を連発する。そして一番肝心の授業が充実している。

これは絶対に狙ってやっていると思う。6章のグリューンケルン校長みたいな毎年同じシャレでは、生徒たちの笑いは取れない。笑いに関し相当の準備や研究をしているはずだ。笑いと授業の充実とはたぶん関連がある。福岡出身で全国区の授業名人有田和正先生は、「一時間で一度も笑いのない授業をした教師は逮捕する」と言っているくらいだ。

ところで、クリスマスを舞台とすると、いい話ができるのはなぜだろう。子どもの頃から『クリスマスキャロル』が好きだったし、『涼宮ハルヒの消失』も名作だ。