大井川通信

大井川あたりの事ども

『お役所の御法度』 宮本政於 1995

霞が関の内情暴露の書である『お役所の掟』に続くもの。前著への日本の読者のたくさんの反響を、精神分析医として分析した部分があって、そこが面白かった。

第一グループは、50歳以上の男性。1944年以前の生まれである。このグループは、日本的な集団主義への批判をうけつけない。

第二グループは、35歳から50歳までで、男女比は90対10。1945年から1959年までの生まれ。集団主義の改革には妥協や積み重ねが大切とたしなめる。

第三グループは、20歳から35歳までで、男女比は60対40。1960年から1974年までの生まれ。集団主義への違和感をはっきりもっていて、批判を歓迎する。

第四グループは、20歳以下で、男女比は50対50。1975年以降の生まれ。集団主義を自分たちと無関係と思っている。

いずれも執筆時点の1994年頃の年齢であるが、この区切りにリアリティがある。僕は1961年生まれだから、第三グループの「先頭」世代にあたる。いろいろな場面で、すぐ上の世代への違和感と、むしろ歳が離れていても下の年齢層への共感やうらやましさを感じてきた。

宮本さんの分析によると、それは日本的な集団主義へのつかり方の違いに由来することになる。僕らは、豊かな消費社会が誕生し個性の尊重がうたわれた80年代に大学生活を開始しており、集団主義への洗脳をかろうじて免れている世代なのだ。だから旧世代の手法に違和感を抱きつつ、内心いやいやそれに従ってきたのだろう。

こうしてみると、今の時代は、第二グループの人たちが、ほとんど現役を退いてしまっている。すでに第三グループ、第四グループが社会の主役なのだ。日本の社会の在り方に大きな変更が生じているのも当然なことだろう。この変化を読み解く指標として、21世紀を待たずに亡くなった宮本さんの分析は役に立つと思う。