大井川通信

大井川あたりの事ども

キラキラとシワシワ

キラキラネーム(の問題点)については、世間でもかなり認知されているだろう。少し前に近ごろの子どもたちの名簿を見た時に、読めない名前の多さに驚いてしまった。純然たるキラキラネームではなくとも、名前のキラキラ化はすすんでいるようだ。

最近、シワシワネームという言葉があることを知り、そのネーミングセンスに笑ってしまった。キラキラに対して、古風でふるくさい名前を示す言葉だそうで、かならずしも悪口で言われているわけではないみたいなのだが、シワシワネームをつけられた当人からすれば、これもたまらない。

先日、自分の子どもくらいの年齢の同僚から本を借りた。大型犬を趣味にしているという人で、その話題に興味をもった関係で犬種図鑑を貸してくれたのだ。その使い込んだ図鑑にはサインペンで、シワシワネームが書き込まれていた。おそらく父親から譲り受けた本なのだろうと思ったが、何気なく話題にすると、その人の子どもの名前だったのだ。シワシワネームもそれなりに流行っているということか。

やはり名前というのは、他人に呼んでもらうものだから、読みやすく、また自分が書きやすいものがいい。だからシワシワが基本になるのは仕方ないにしても、見栄えのキラキラ度も一定必要だろう。

そう思うのは、僕自身が、何をかくそうシワシワネームをつけられた人間だからだ。この新語のおかげで、僕の長年の心の重荷が説明できる気がする。

僕の名前は、祖父と伯父から一字ずつもらって名づけたそうだ。祖父は明治生まれで、叔父は大正生まれ。これだけで、シワシワ度はかなりのものだ。しかもこういう名づけ方だと、語感やイメージは二の次になってしまう。

僕の名前でいうと、上の文字は、もちろんプラスの意味があるのだが、普通にマイナスの意味でも使われる言葉だ。これは致命的だろう。また、下の文字の語感は、昔話の登場人物みたいで、字面と響きがどうしても古びている。

もっとも、一度だけ信頼できる知人から、美しい名前だとほめられたことがあるから、そういう見方もできる名前ではあるのだろう。シワシワからキラキラへの反転の具合は微妙だ。

まあ、こんなわけで、我が子には、言葉の響きやイメージを意識して、基本的に昔からある名前を選んだ。シワシワとキラキラの両要素を取り入れた名前にしたつもりなのだが、子どもたちがどんな風に思っているかはわからない。