JR南武線、といっても僕の子どもの頃のようなチョコレート色のダサい車両ではない。すっかり都市郊外を走るお洒落な路線になっていて、西府なんて新しい駅もある。
目の前に、中学一年生の制服姿の男子学生が並んで立っておしゃべりをしている。二人とも小柄でひょろっとして頼りなさそうな体形だ。しかしこぎれいにしているし、頭の良い素直な子どもたちなのだろう。
一人は手に、ドデカミンストロングのカンを持っている。僕も職場でたまに飲むやつだ。この手のものとしてはカロリーが低い。「これ、安いから」とその子。
ふたりは、これがエナジードリンク(エナド)かどうかを議論し始める。ただのジュースと値段が変わらないことが気になるようだ。
「いちおうエナドじゃない」と飲んでいる子が結論づける。
次に二人は、鉄棒のさかあがりの話をはじめたようだ。
「リズムはわかるけど力がないから回れない」とドデカミンを持っている子。ちょっと遠くを見るような目をして、一言。
「ちっちゃい頃、一回だけ成功した記憶がある」