大井川通信

大井川あたりの事ども

ついてるね、のってるね

禅宗様詣での一環として、県内の禅宗様仏殿の内部公開に出かける。福智町の興国寺観音大祭だ。駐車場が混んでいることを予想して、少し離れたところにある上野焼会館の駐車場に車をとめて歩く。これは杞憂で境内には受付のテントと関係者の姿が目立つくらいで、狭い駐車場にも十分空きがあった。

千手観音像を拝観できるだけと思っていたが、たまたま僧侶4人による祈願の読経の儀式にただ一人の参拝者として立ち会うことができた。由緒がある禅宗様仏殿の本来の使われ方を体験できるのは、思ってもみない幸運だ。

上野焼会館で曜変を連想させるデザインのお皿を買ってから、福智町に行くならと予定していた行動に出る。当町出身の詩人加藤介春(1885-1946)の生家を探ってみたいと目星をつけていたのだ。

なんとか目当ての旧集落の細い道に車を停めて、あたりを歩いてみる。昔の住所だけではどうにもならないとあきらめかけたとき、目の前の民家の駐車場で作業をしているご婦人がいたので、念のための詩人の名前を口にしてみると、なんと介春のお孫さんの奥さんだった。

誘われるままに、介春の育った旧家の中に招かれ、昔のままだという裏庭をながめながら孫の高弘さん(1942年生まれ)からお話をうかがう。地元の興国寺の檀家のようで、僕が遠方からお参りに来たというのも印象が良かったらしい。

鎮守の杜は時代を経ても変わらない。近くの貴船神社にお参りして昔をしのび今回の出会いを感謝する。神社の下の田んぼに出てみると、電線にとまっていたチョウゲンボウが優雅に滑空する姿を見ることができた。小鳥の群れはアトリか。

あっと気づいて、あわてて車に戻りテレビをつけると、ぎりぎりエリザベス女王杯の中継に間に合い、名牝ジェンティルドンナの娘ジェラルディーナのG1初制覇の瞬間を見逃さずにすんだ。

そのあと土日で小倉の展示場に出店していた妻を迎えに行くと、妻も今までで最高の売上額だったようで機嫌よく、帰りに御馳走にありつく。