大井川通信

大井川あたりの事ども

玉虫、飛ぶ

玄関先のケヤキの幹に、見える限りでも50匹以上のクマゼミがとまっている。こうしてみると、同じクマゼミでも色合いとか大きさとか形が微妙に違う。アブラゼミの姿はまったく見えないけれど、午後遅くなって、ジリジリというアブラゼミの声も聞こえるから、どこかに潜んではいるのだろう。

道をはさんだ向かいの家の生け垣あたりを、目立つ虫が飛んでいる。硬い前羽を広げた細長い甲虫で、日光を受けてグリーンの輝いている。

一目で、タマムシとわかった。生け垣の下の道路に落ちてくれれば拾えるのだが、と思ったが、生け垣を越え、隣家の庭を飛び越していく。あわてて、道路に出て追いかける。タマムシは一定の高度を保ったまま、別の家の庭の上空に消えていった。

たまに見つけるタマムシは舗装道路に落ちていることが多い。飛んでいる姿を追いかけたことは今まで無かったと思うが、ふわふわと身が軽く、なかなかの飛びっぷりだった。例年6月の頃に日中飛んでいる姿を見かけるゴマダラカミキリに比べても、飛ぶのは得意なのかもしれない。

そのあと、妻といっしょに隣町の神社にお参りに行く。僕以上に神様を大切にする妻は、コロナからの回復のお礼参りをしたいというのだ。この神社の境内は石段の上にあって手ごろなウォーキングになるから、僕も喜んでついていく。

駐車場で車を降りて、参道に当たる通りを歩いていたら、歩道のかたわらから垂直に舞い上がった虫がいる。これも青空をバックに、見事にグリーンに輝くタマムシだった。もう少しはやく気づいていたら、拾えたかもしれない。こんどもタマムシは、住宅の植木を越えて、軽々と飛び去っていった。

一日に二度、タマムシが飛ぶ姿に出会えて、なんだか得をしたような気がした。