大井川通信

大井川あたりの事ども

読書会レジュメ(聞き取りコレクション)

読書会で、森崎和江さんの『まっくら』を取り上げるにあたって、そもそも聞き取り・聞き書き(的なもの)が僕たちの暮らしや思想の中にどんな風にかかわっているのかが知りたくて、参加者がそれを持ち寄るのを課題にした。以下のレジュメは、僕自身の「聞き取り・聞き書き」実践から、四つの文章をピックアップしたもの。

「記憶のために」は、大分県在住の美術家諏訪眞理子さんの「記憶を収集するプロジェクト」に応じて、僕が彼女に送付した100枚のカード(写真と言葉のセット)のうちの二枚(ここでは言葉のみ)。このプロジェクトで、自分の「作品」が美術館に展示されたり、音楽家によって曲をつけられたりするという、特別な経験をすることができた。諏訪さんに感謝。レジュメの後半は、ブログ記事二本。

 

記憶のために 2007/8/5 

「あのコンクリートの上に(巻上機が)座っていて、トロッコを引っ張っていたね。おくにまだ二個あるから、機械は三つだったかな。坂を下ったところから、レールが地面にもぐってたけど、その辺の田んぼは陥落して水浸しだった。一反いくらっていう補償金がもらえたけどね。昭和24年にここに嫁いだ頃はまだ物が無い時代で、夜に柿の実を盗む(炭坑夫の)キャップランプの明かりが見えても、何も言わなかったよ。35年の三菱炭鉱の閉山のあと壊そうとしたけど、頑丈だから機械の歯の方が折れたりして、それで壊せずに残ってます」

 

記憶のために 2008/3/17

「この下は厚い岩盤だったから、掘り進めるのに苦労しました。金鉱山で岩盤を掘る技術を仕込んだ人と一緒に3人でやった仕事です。この風洞坑の前には扇風機があって、坑内の排気をしていました」

かつての炭住の集落が尽き、ゆるやかな山道を少し歩いた所で、元炭鉱夫の立石さんは懐かしそうに振り返る。この小さな坑口を小学生に見せるために、周囲の草刈などもしているという。すぐ後にはボタ山がひかえ、古い時代の煉瓦の巻き座も見える。まるで廃鉱の記憶の陽だまりのような場所で、先を歩く立石さんの姿がすっと山に消えた。

 

ooigawa1212.hatenablog.com

 

ooigawa1212.hatenablog.com