大井川通信

大井川あたりの事ども

今あるもので満足すればいいじゃない

モームの小説には、紙面から浮き上がってくるような名言が多い。『お菓子とビール』から。

ロウジ―は、若き医学生のアシャンデンが、彼女の男関係を嫉妬するのを知って、こんなふうに言う。

「どうして他の人のことで頭を悩ますの? あなたにとって何の不都合もないじゃありませんか。わたし、あなたを楽しくさせてあげるでしょ? わたしといて幸福じゃないの?」「すごく幸福さ」「だったらいいじゃない。いらいらしたり嫉妬したりするなんて愚かしいわ。今あるもので満足すればいいじゃない。そう出来るあいだに楽しみなさいな。百年もすれば皆死んでしまうのよ。そうなれば何も問題じゃなくなるわ。出来るあいだに楽しみましょうよ」