大井川通信

大井川あたりの事ども

里山でイノシシに出会う

ヒラトモ様にお参りしようと山に入るが、林道が相当荒れている。林業の作業のために重機で掘り進んだような林道は、人口の谷か溝のようなものだから、大雨の時に落ち葉や枝が流れ込んでしまうし、枯れた竹が倒れこんでしまう。使われずに管理されなくなった林道は、もとの自然に戻ろうとするから歩きにくくなる。

一方、おそらく昔の人が使っていた尾根沿いの山道は、風通しも良くてゴミもたまらず歩きやすい。いわばメンテナンスフリーで、合理的なものだと思う。

林道がふさがれたので、尾根沿いの山道に迂回してアクセスする。ここからは斜面を登るだけというふもとまで来て、今日は新しい道を探してみようというスケベ心が顔をのぞかせる。ヒラトモ様に上がらずに隣村のタジマに抜ける道を以前から見つけたかったのだ。

倒木でふさがれた場所などはあるが、しっかりした山道はある。ひらけた雑木林には、かつて信仰されていたホコラの石材が崩されて放置されている。これが今日の発見だ。集落は遠くないはずなのだが、降りていく道がわからない。

残念だが、ここからは経験上無理は禁物だ。荒れた里山に出入りできるポイントはごく少数の点として存在している。その点を見つければ、里山に侵入することは可能だが、広い面としての里山から、出口である未知の点を見つけるのは至難の業だ。

むやみに下りても、崖や藪にはばまれてしまうのがおちだ。思い悩んでいると、林の先の道で、イノシシが横切る姿が目に入る。里山でイノシシに出会うのは、3回目(以前の2回はヒラトモ様参りの帰路とクロスミ様参りの帰路)だが、やはり怖い。

首にぶら下げたクマよけの鈴を揺らしつつ、笛をピーピー吹いて大急ぎで道を戻る。ヒラトモ様のふもとまでたどり着くとほっとして、気を取り直してお参りしてから里山を出た。