大井川通信

大井川あたりの事ども

我が街の斜面緑地と山当て

僕が住む住宅街は、小さな丘の里山を造成して作ったものだ。近ごろの造成技術は進んでいるようで、土地のでこぼこを巧みに埋めて無駄なく住宅地にしてしまうから、斜面が緑地で残されることは少ない。それでも寺社やため池のある斜面にはもともとの林が残されている。その部分には里山時代の細い山道が残されていて、そこを歩くとタイムスリップしたような不思議な気分になる。

ババウラ池の縁には、狭いけれども20メートルはあるような高木がそろった小さな林がある。古くからの住人が裏庭としてきれいに管理しており、秋が深まると池越しにみえるモミジの紅葉が住宅街の人たちの目を楽しませている。

この場所の数十本の高木は、里山時代から残されたもので、まっすぐに立った姿から、スギかヒノキかと漠然と思っていた。今回近くからよくみると、すべて松だった。

僕が育った武蔵野のアカマツは、くねくねとうねって伸びていた。きちんと枝打ちされ手入れされた植林の松は、こんなふうに見事に真直ぐ育つものかとびっくりする。幹には赤味が少なく、海沿いのこの地方に多いクロマツだとわかる。アカマツ松ぼっくりを見慣れた目には、一回り大きなクロマツの巨大な松ぼっくりは少し異様だ。

灯台下暗しというが、こんな近くの林の樹種を20年間知らずに過ごしてきたわけだ。大井川歩きの底はまだまだ深い。

山当てについても少し。僕の住む住宅街のメインストリートといえば、県道から進入して公園の横を走る歩道付きの道のことになるだろう。この道の突き当りに見えるのが、ヒラトモ様が山頂にある里山なのだ。山頂といっても峰がほんの少し突き出ているにすぎない。だれもそんなことは意識していないに違いないが、僕は勝手に「ヒラトモ様道路」と呼んでいる。