大井川通信

大井川あたりの事ども

低山の恐怖

前々回は、水落山登頂の成功し、前回は迷ったものの何とか高松山に登頂できた。できればこの二つの低山の間の縦走をしてみたい。最初の水落山登山の時にもそれを試みて二つくらいのピークをたどって、竹林の密集した谷の前で断念している。

高松山で迷ったときも、それと知らずに水落山方面に峰をかなり歩いて、谷に下がる道のところで引き返している。僕の勝手なイメージでは、それぞれの山から谷一つ向かい合ったところまで進んでおり、そこさえ越えれば両者は結びついて縦走が可能になるはずだった。

そこで、こんどは水落山の方から峰を伝い、コンパスで方向を確認したり、ボイスメモに周囲の様子をしゃべって録音することにした。これは高松山の周辺で山の中を堂々巡りした恐怖と反省に基づく「対策」だ。ただ今回はやむを得ず出発が午後遅くなり、夕方からは雨の予報が出ているのが気になってはいる。

難なく見覚えのある竹林の谷にたどりつき、そこを突破する。しかし予想に反して、谷の向うは見覚えのない景色だ。仕方なく峰に沿って道らしきものをたどると、今度は低木がやぶのようになった谷に出た。なるほどこれこそが前回反対側から見た谷だったのだ、と勇んで強行突破する。

しかし目論見は外れる。コンパスの方角もあやしくなってくる。ただ、ここまで来て引き返すことはできないと前に進むと、またしても谷が。これも下りかかるが、しかしどうも道らしくなくなっている。思い返すと、途中からまったくテープのサインを見なくなっていた。

急に恐ろしくなって、引き返す決心をする。前回の反省で途中の道の特徴を覚えながらきたのでなんとか迷うことはなかったが、急な谷の上り下りで体力を消耗している。目的があるときは何でもなかったが、引き返すという不毛な作業では疲労が重くのしかかる。時刻も気にかかる。イノシシもこわい。この無謀な挑戦を心底後悔した。

ようやく水落山にたどり着いたときには、本当にほっとした。ちゃんとした準備と装備が用意できるまでは、もう山には入るまいと心に決める。