大井川通信

大井川あたりの事ども

鎮守の杜のナラ枯れ

遠目に見ると、真夏なのにワカ神社にすっかり枯れた木が日本目立っている。おそらくナラ枯れなのだろう。境内と裏山の樹木が10本以上、二年前に伐採された上に、かろうじて残った木が枯れてしまうとは。

境内に入って、久しぶりに樹木を観察して、驚くべきことに気づいた。

鳥居の脇に、日本の大樹がある。一本はイチョウの巨木で、一本は名前のわからない常緑広葉樹。どちらも幹の直径は一メートルは超えているから、隆起した根同士が絡まりあって、いわゆる夫婦の樹木になっている。位置といい雰囲気といい、誰が見ても神木の貫禄がある。

二年前の伐採で、他の木はともかく、平然とこの木が伐採されていることに驚いた。しかし、裸になった幹が2本並んで4,5メートルの高さで残されていることには、さすがに神木に遠慮する気持ちがあるように思われた。境内には、切り株になった木もあったので。これなら、また枝葉をつけることができるだろう。

ところが、この二本が完全に枯れていたのだ。葉が出ていないだけでなく、樹皮がカサカサになって異様な見た目になっている。よく見ると二本とも根元に近く小指の先ほどの人工的な穴がいくつも並んでいる。

性善説の立場をとれば、思わず枯れてしまった樹木を助けようと薬剤を投入したとみることもできるだろう。しかし、樹種の違う二本が、全く同じように枯れてしまうことは考えにくい。また、樹木にプラスになる薬剤を入れた(これ自体伐採の状況をみれば考えにくい)にしては、枯れ方があまりに病的である。

根絶やしにするための毒薬を注入したと考えるしかないところだろう。伐採と薬殺とを組み合わせた理由はわからない。僕は、思わず寒気を覚えた。この決定をしたのは、年長でも戦後生まれの住民たちだろう。鎮守の杜を厚く信仰してきた村の先祖たちは、子孫のこの傍若無人なふるまいにどんな視線を向けているのだろうか。

僕が寒気がしたのは、おそらく子孫の側に何の罪の意識もためらいもなかったという点だ。江戸時代以来村人の暮らしとともにあった神木に、ドリルで穴をあけ無表情に毒薬を注ぎ込む。この意識の断絶の深淵には恐怖すら覚える。

 

 

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