大井の鎮守の杜である和歌神社は、とても不思議な場所だ。
短い参道の先には田んぼが広がっているが、周囲には住宅があって、社殿背後の森も里山の開発からわずかに取り残されているだけだ。しかしそこがかなりの傾斜地であり、人が立ち入りにくい場所で、広葉樹の大木が深々と境内を取り囲んでいる。
二年前にここにヒメハルゼミが大量に発生することに気づいたが、今年はまた新たな発見があった。7月21日にカブトムシを境内でひろった話を書いたが、その後も早朝立ち寄るたびにカブトムシを見つけることができた。
7月30日 お母さんと散歩する幼稚園くらいの男の子に、手持ちのビニール袋でカブトのオスとメスをひろってあげる。弱ったオスがもう一匹いた。
8月2日 ひっくり返ったまま、やたらに足を動かしているメスをひろう。元気そうだが、起こしてもひっくり返ってしまい、酔っぱらったようで正常に歩けない。やや弱ったオスもいる。
8月4日 弱ったメスが落ちている。
8月6日 死んだオスが二匹、メスが一匹落ちている。弱ったコクワガタも。
8月7日 地面に落ちた虫はいなかったが、銀杏の木のあたりから、社殿の屋根を越えて森にとんでいくカブトムシの姿を目撃する。
カブトムシについては生態を観察したり飼ったりした経験は乏しいので、見当違いのことになるかもしれないけれども、気づいたことをメモしておく。
境内には銀杏の大木とそれに絡み合うようにたつもう一本の木があり、カブトムシはその根元に無防備に落ちている。銀杏の上部は黒く汚れている部分があり、樹液が出ているように見えなくもない。樹液に集まるクワガタやカナブンも少ないながら落ちていた。境内には街灯はない。
上に書いた以外にも、角や前羽など身体の一部がきまって散乱しており、天敵の鳥などに食べられているのかもしれない。近くのお寺の裏の林で、先日早朝にフクロウを見かけている。
どのカブトムシも大きくて色つやが良く、生きているものは元気がいい。21日に見つけたものは、20日たった今も元気で、ざっと計ると、頭部まで60ミリ(角を入れると90ミリ)あり、ネットで調べても最大級の大きさだ。
もし裏の傾斜地の林で生まれた個体なら、長年人手が入らず落葉の堆積した土地は、カブトムシの幼虫にとって栄養に恵まれた土地なのかもしれない。
今朝もカブトムシの姿はなく、どうやらシーズンが終わったようだが、7月の内からもっとていねいに観察すれば、発見できることもあるかもしれない。来年が楽しみだ。