大井川通信

大井川あたりの事ども

銀杏の黄葉

この秋は、資格試験の勉強など再就職の準備のためにバタバタして、紅葉をすっかり見逃してしまった。ババウラ池のモミジも、気づいたときには散りかけている。

ようやく間に合ったのが銀杏だ。こうしてみると、里山の中にも、古い集落の中にも、銀杏はところどころで黄色く燃える炎のように立っている。銀杏は植物学的には特異な種類であるらしいけれども、黄葉した姿は、なるほどちょっと異様なほどに美しい。真っ青な空を背景にするとなおさらだ。

今日は出張の帰り、博多近くの古い町並みを歩いた。あちこちに小さなお寺や社があって、境内にはきまって銀杏の古木が立っている。お寺の門前にシャッターを閉めた小さな商家があって、腰の曲がったおばあさんが、植木鉢をながめている。

僕はお寺の銀杏を見上げながら、銀杏の黄葉が見事ですね、と声をかけた。おばあさんはにこやかに応じてくれる。毎年楽しみですね、と聞くと、数年前に枝を切ったけれどとすぐに伸びたとのこと。

そういえば、大井の力丸家の銀杏も枝を落としたあとに、すぐに形が戻ってきれいな黄葉を見せていた。銀杏を守るムツコさんと、銀杏の下で、山伏の伝承の話をうかがったことを思い出す。

今年の秋の色づきは、街かどの銀杏で十分、という気持ちになった。