大井川通信

大井川あたりの事ども

友人の誕生日

若いころからの友達の誕生日にお祝いの電話をする。たまに連絡を取り合うくらいで、長い間会っていない。

彼女も還暦。すいぶんと明るい声なので、理由を聞くと、やはり子どもから手が離れたことが大きいという。教育方針で悩んでいた息子さんも、今年地元の大企業の内定が出たそうだ。看護士になった自立した娘さんとは、同居していた頃よりよく話すようになったそうだ。

50代前半で事務の仕事はやめて、今は、時間の自由がきくホームヘルパーの仕事をしているという。そういえば、以前、介護職の資格をとるという話を聞いたことがあった。お母さんの介護の必要となったときに、この仕事を始めていたことが、お母さんを介護する上でも、入居する施設を探すときにもとても役にたったとのこと。

ヘルパーの仕事でお年寄りのお世話をするとき、母親にももっと優しく接してあげていたらと後悔するという。母親への親孝行のつもりで今の仕事をしているところがあるという。

彼女とは昔、職場の同僚で、仕事のできない僕はずいぶん迷惑をかけた記憶がある。いっしょに資格試験の勉強をしたこともあるので、久しぶりに資格の勉強をしている話や、新型コロナウイルス感染症で闘病した話などをする。

結婚して、子どもを育て、仕事をして、家族の病気と向き合い、親をみとる。それぞれの苦労の形は違うのだろうけれど、大枠同じような経路をたどって、還暦の今にいたっている。話を聞いていると、自分には及び難いような経験の厚みを感じるが、やはり同世代の同志という感じが大きい。

この先、お互い様々な試練を経験するのだろうけれども、今はつかのまの人生の休息の時間なのだろう。あたたかい気持ちになって、電話を切った。