大井川通信

大井川あたりの事ども

次男の子育て(退職願)

3月の終わりごろからまた次男の仕事の愚痴が多くなった。それだけでなく、睡眠不足だったり、吐き気がしたりしているという。

昨年八月に地元の職場に転勤したときにも、辞めたいという意思表示が強かったが、それは新しい環境への一種の拒絶反応であって、明らかに働きやすくなった環境に慣れさえすれば、持ち直すものと思っていた。実際、秋以降は、愚痴も少なくなったが、それも今思えば、親に言っても無駄だというあきらめからだったのだ。

今度の職場では、次男のスキルが向上するように次男のペースで育てようとしてくれているのが見て取れた。学校の紹介で入った今の職場より、良い仕事があるとは思えない。この先長く働いていくためには、介護の技術をゆっくりとでも身に着けていくことがベストだろう。そんな思い込みが親にあった。

4月の初めに、次男と話し合ってみると、実際に精神的に追い詰められているのが肌で感じられた。これ以上頑張らせて身体を壊してしまっては何にもならない。辞める方向で話し合いをすすめると、次男の実情と本音をようやく知ることができた。

以前は、同じことしかさせてくれなかったが、今度の職場では、少しずつ仕事を増やしている。職員や利用者から、様々な要望がとんでくる。それへの対応が難しいということだった。

同時にいくつかの課題に注意を向けるのが、次男のもっとも苦手なことなのだ。あらためて考えてみると、介護の仕事は、次男にはハードルが高いものだった。自分が一昨年、介護の初級研修を受けて、気づかいやマルチタスクの大変さを知りながら、そのことに思い至らなかった。

次男の特性は、一つの事を集中して追い求めるようなときに力を発揮する。作文が驚くほど上手なのは、文章が単線的で注意をそらす必要のない作業だからだろう。職業能力開発校みたいな学校などに通って、再度適性のあった仕事をじっくり探そうという結論になった。あと数年間、いや20代のうちくらいは仕事探しの期間でもいいくらいの気持ちをもとうと、夫婦でも合意ができた。

次男の職場に夫婦で話に行くと、次男の状況に理解を示して、人手不足の中、こころよく送り出してくれた。場合によっては、いずれまた戻ってもらいたいくらいの様子だったのはありがたい。

退職願をかかなければいけなくなったというので、ネットに文例があるよと教えてあげる。あとから、便箋にしっかりした内容の退職届を書いてきたから、ほめると満足そうだった。

先月末で退職届を提出し、職場にはもう行かないが、有給等をつかって実際に退職するのは、今月の末になる。最終日には、職員からのメッセージとともにメロンやお菓子のセットなどをいただいた。実際にいい職場だったのだろう。しかし、次男には未練はないようで、翌日には自室の大掃除や毛布のクリーニングなど、自分からかいがいしく身体をうごかしている。

特別支援学校の高等部を卒業して、5年1か月の勤務、お疲れ様でした。のんびり身体と心をやすめてください。