多摩歩きのガイドブック『武蔵野風土記』を手に入れたことで、僕の子ども時代の蔵書再構築プロジェクトはほぼ完成した。本の汚れ等に敏感な僕の場合、ただ集めればいいというのではなくて、一定程度の「美品」であることも大切だ。こんなことができたのもネットでも古書流通の充実のおかげである。
蔵書は物置部屋に置いていたが、ふと思い立って、普段寝ている畳の部屋の書棚に並べてみることにした。棚が二つの小さな書棚(ボックス)に子ども時代の本全部がきれいに収まったので、毎日これを眺めているだけで幸せな気持ちになる。
幼児の頃の絵本、小学館の学習百科事典、岩波の「科学の学校」、少年少女向けの文学全集の何冊か、「天体望遠鏡の作り方」、旺文社文庫や学燈文庫。
ところで、タイトルを忘れていた『武蔵野風土記』を手に入れたのは、実家のある地元の古書店で現物に出会えたためだった。本体はある程度きれいだが、表紙があちこち破れている。補修テープで丁寧に直してみたもののやはりきれいな本が欲しい。それでネットで状態のよさそうな本を探して、もう一冊購入することになる。
前の本も補修済みなので処分するのは惜しい。それで実家近くに住む姉に送ることにした。すると、これはもともと父の本で、これを見てあちこち近所を家族で歩いたから、姉にも懐かしい本だったようだ。この本の懐かしい写真を見ながら、もう一度同じ名所旧跡を歩いてみたいという返事があった。
家族や姉弟というものは、同じ時間と生活を共有している。自分だけの記憶と思っても、意外と自分よりも詳しく憶えていたりするものだ。思いつきだけれども、送って良かったと思った。