ある僻地の学校を視察することになった。電車で目的の駅に行き、そこから歩いて数キロの場所だ。学校の敷地は細長く建物も貧相だったが、この地域の資力ではこれが精いっぱいだったのだろう。近隣のいくつかの集落が校区になっているが、そのうちの一つは性に関するタブーが強い地域だという。僕は興味をもったので、かえりがけ、そこまで歩いてみることにした。
駅とは反対側に歩くと、集落はすぐにあったが、その中心部に予想外の立派な神社が鎮座している。うっそうとした境内は歴史を感じさせるが、建物などの施設はきれいに整備されている。僕はキツネにつままれたような気持ちになって、神社の外に出る。街道沿いに広場があって、そこにいかにも昆虫のいそうな太いクヌギの老木があった。
近づくと、案の定、カブトムシがいる。見ている内に、カブト以外にもクワガタがぞろぞろ出てくる。巨大なミヤマクワガタもいる。いつのまにか子どもたちが樹木の周囲に群っているので、なんで冬に昆虫がいるのだろうと聞くと、今は冬じゃないよと笑う。
子どもたちが昆虫を採りつくして大丈夫だろうかと思うが、周囲は深い森だ。そこにいくらでも生息しているのだろうと考えて安心する。
※僕の夢に出てくる寺院や神社は、特に観光地にある名所というわけではないのに、いつもびっくりするくらい魅力的で、細部まで輝いている。夢から覚めたあとですら忘れがたいくらいに。子どもの頃からのあこがれが結晶しているからだろう。それは虫も同じ。今回は、大きなミヤマクワガタだった。ゲンゴロウが出てくることも多い。