大井川通信

大井川あたりの事ども

タガメのことなら2時間くらい話せるよ

僕は友人知人がとても少ないし、人と深い付き合いをするのが苦手だ。ただ表面的なつきあいだけは何とかとりつくろってきたので、ひととおりの職業生活をなんとかこなしてきた。その間に出会った人たちにはそれなりの印象を残してきたようだ。

もともとおかしなキャラクターだし、それをネタにすることで人間関係のめくらましにしてきたこともある。かなりのおしゃべりだから、無神経に自分の好き勝手に話してきたという側面も否めない。

僕の今の若い同僚が、かつての僕の仕事仲間と飲む機会があったという。仕事もできるし、頭も人柄もいい。自分の芯になるポリシーがある。僕は好感を持っていたが、果たして彼の方はどうだろうか。

「あの人は、タガメのことなら2時間くらい話せるよ」と言っていた由。

そうだったか。彼と働いていたころは、自分の中で水生昆虫のマイブームがあったころだった。生き物ウォッチングでも、出会った時期によっては、鳥好きと認識している人もいるだろうし、セミ好きともビーチコーマーとも思ってくれる人がいるだろう。

さすが聡明な彼のことだから僕の趣味を覚えていてくれたのだ。だが惜しい。タガメではなく、ゲンゴロウなのだ。水生昆虫つながりで、ゲンゴロウが水生昆虫の王者であるタガメに変換されてしまったのだろう。

若い同僚には、僕が一昨年、子どもの頃からの憧れだった大型種のゲンゴロウを身近な田んぼで見つけることができたことを話す。何事でも半世紀くらい願えばかなわないことはない、という教訓ネタでオチをつけることができた。