大井川通信

大井川あたりの事ども

かわいい鳥/おもしろい鳥

近頃は、双眼鏡をもって散策することがなくなったばかりでなく、短眼鏡を失くしてしまって、往復の通勤時に鳥を見つけることもまれになってしまった。こんなことではいけないと思いつつ。

駅までの通勤路で、街なかにあるため池の名前は新池という。冬場で水はとても少なく浅い。その浅瀬に足をつけて、ぽちゃぽちゃとセキレイがエサを探して歩いている。

頭から背中までが真っ黒で、眉のあたりだけがキリっと白い。思わず、かわいいと思う。白黒のツートンカラーのセキレイは別にハクセキレイがいて、こちらの方が数が多いが、白黒が交じっているイメージでそこまできれいではない。セグロセキレイは、ちょうど小型のカササギのような気品がある。

駅に続く商店街の道を歩いていると、真横から大きな音で笛に吹かれたような気がして、思わず足をとめた。ただしホイッスルのようにけたたましい音でなく、もっとふくらみと変化のある美しい音色だ。

立ち止まってながめると、車道の向かいの木造家屋の瓦屋根に、イソヒヨドリの雄が止まっている。全身ブルーで胸だけが赤い。ただし青も赤も渋くくすんだ色なので、そこまできれいではない。

僕は身体の向きを変えてしばらく見入ってしまった。通学途中の高校生たちにも鳥の名前を教えてあげたいくらいだったが、気にするそぶりはまるでなかった。

また、仕事の帰り。週末の気楽さから、公園の反対側のトマトラーメンを食べて帰ろうと思い立つ。公園をでてすぐの路地の住宅の屋根に、ハシブトガラスが一羽止っている。二メートルくらいの至近距離だから、カラスは飛び立とうと身構えている。

僕が試しにカーカーと鳴きまねすると、カラスも鳴き返す。それに続いて別の鳴き方で、これならどうだ、という感じで挑発してくる。今まで聞いたこともない奇妙な鳴き声の連続だ。僕ができるだけそっくりに鳴きまねを続けると、明らかにカラスは動揺した様子だ。

去年出会ったカンタロウとまったく同じ反応だ。カンタロウだろうか、それともカンタロウに似た好奇心あふれる別のカラスだろうか。真っ黒なカラスを見つめても、確かめるすべはない。