大井川通信

大井川あたりの事ども

カンタロウと再会する

外田さんから、カラスのカンタロウのことを尋ねられた。カンタロウにはしばらく会っていない。吹雪の中で鳴きまね合戦をしたのが、カンタロウとのクライマックスだったような気がする。

5月に入っていくつか大変だったことのメドがついて、少し気持ちに余裕が出たためだろうか。帰宅のとき、東公園をキョロキョロしながらゆっくり歩いていたら、出口に近い建物のところで、すぐ前の枝に飛び移ってきたカラスに気づいた。

枝のすぐ下に立ち止まって、じっと見上げながら、ためしに「カンちゃん、カンちゃん」と名前を読んでみる。普通のカラスならここで警戒して逃げてしまうが、枝にとまったまま、小首をかしげて、こちらを見下ろしている。

うう、かわいい。

カラスは、小枝をちぎって下に落とすが、植込みの中に落ちてとることができない。意図的だろうか。すると、首を伸ばして、くちばしを半分開けたまま、身体を上下に波打たせながら、小声でアーアーとやり出した。

これぞ、まさにカンタロウアクション。カンタロウ以外のカラスではまず見ることのできない鳴き方だ。僕も道行く人を気にしながら、アーアーと鳴きまねをする。

しばらくすると、カンタロウは、遊歩道を挟んだ反対側の林の中に飛び移ってしまう。ぼくもあわてて、おいかける。そのとき、別のカラスが、同じ木々の中に飛び込んだのを見逃さなかった。

林の中に入って見上げると、少し離れて二羽のカラスがとまっている。どちらがカンタロウだろうか。すると、高い枝に止まった方のカラスが、小枝をちぎってから、それを下に落とした。

意味なく枝はちぎらないし、必要な枝なら下には落とさないから、何らかのメッセージなのだろう。けっこう目立つ太い小枝だったから、僕はすかさずひろう。

もう一羽は、カンタロウの彼女かもしれない。僕は、二羽の姿が見えなくなってから、カンタロウからのプレゼントを鞄にしまって、駅に向かった。