大井川通信

大井川あたりの事ども

カンタロウ vs. 十日恵比須(とおかえびす)

カラスたちの根城である東公園が、新年の名物行事である十日恵比寿のお祭りの屋台一色となった。様変わりした公園を、カラスたちはどんな風に思っているのだろうと、ついついカラス目線で考えてしまう。

残飯や生ごみにありつく機会は増えるだろうから、年に一度のお祭りを楽しみにしているかもしれない。僕もうかれて、公園から車道にまで広がった夜店を見て回るが、久しぶりの十日恵比須で、「東京ケーキ」の夜店は見当たらなかった。

6、7年前にテキヤへの関心からお祭りの夜店を調べたことがあって、その時は、十日恵比寿には「東京ケーキ」の複数の出店(下記の北海道の店と福岡拠点の店)があったと思う。はるかに規模の小さな宗像大社の初詣にも、北海道を拠点にした「東京ケーキ」のお店は出店していた。同じような小さなカステラ菓子では、今ではアニメのキャラクターをかたどった商品のお店が目立つから、それが時代の流れなのだろう。

こんな雑然とした公園では、カンタロウの識別など無理だろうと思いつつ、池の周囲の林に行ってみると、近い枝に止まっているカラスがいる。声をかけながら枝の下までじわじわ近づいていっても逃げたりしない。条件1クリアーだ。

やがて、飛び立つが、遠くに飛び去らずに、舞い戻るように近くの池のふちに着地した。条件2クリアー。これでほぼ確定だろう。

池の反対側のふちにしゃがんで見ていると、カラスはこちら側に向かってじゃぶじゃぶと水の中を進んできて、二メートル先くらいで、バタバタ羽ばたきながら水浴びを始める。目がクリクリとして可愛い。ふだんカラスが見せない奇妙な自己アピールだ。条件3クリアー。確定。カンタロウにまちがいない。

餌付けはしないルールだが、今日はお祭りだからいいだろう。東京ケーキはないけれども、すぐ近くに「大阪焼き」の屋台がある。買ってみたら、どら焼きサイズのお好み焼きだった。木の根元に置いたが、高い枝に飛び移って濡れた羽根を乾かすカンタロウは気づかない。周囲のカラスが騒ぎ出し、いちはやく寄ってきた見知らぬカラスがかっさらってしまった。