このところ、昼休みの公園にカラスのカンタロウがやってこない。すこし土地が高くなった林の中が定位置なのだが、ここで無為に30分の時間をつぶすわかにはいかない。
軽く柔軟運動をしたり、筋トレらしきものをしたりするのだが、正拳突きもメニューの一つだ。近ごろは職場の空手の名人にアドバイスを受けているのだが、それで蹴りの練習も取り入れることにした。
せっかく周囲に大小の立木があるので、それを相手に見立てて正拳を突き、前蹴りを入れる。やはり対象に向き合うと真剣みが出る。ふと思いついて、拳を突き立てながら、暗記した英語のフレーズを口にしてみた。すると、なんだかフレーズが調子よく身体におさまる感じがしたのだ。
新しい職場にかわってから、毎朝三つずつ格言風の英語のフレーズを書き写して何度も口にするようにしている。この格言というのが意外に良かった。今までは英単語を効率的に組み込んだような断片的で意味のない例文を暗唱してきたが、格言ならば単独で意味を味わうことができる。語学学習の範疇を超えて、わが身を律することができる。
そのあと、新しく学習した格言を含めて、今までの学習分全体を音読する。学習が進むにつれてこの作業が膨大になっていく。ただし、読むという作業の繰り返しだけでは、自分の中から反射的にそのフレーズが出てくるというようにはならない。
正拳突きの瞬間に一気に吐き出す息に合わせて、フレーズを口にするためには、それをひとかたまりの音として扱えるようにならないといけない。立木という仮想相手に言葉を吐き出す=突きつけるという訓練にもなる。
これならたとえカンタロウに会えなくとも、そこそこ有効に昼休みの時間を使えそうだ。