昼休みに公園の周遊路を歩いていると、道の脇にある水飲み場の上にハトがとまって蛇口をつついている。この公園で人なれしたハトはまったく珍しくないが、奇妙なふるまいが目にとまった。
おそらく水が飲みたいのだろうが、水がたまっていないのだろう。近づいてみると、案の定、蛇口と排水口の周囲は乾ききっている。僕は、「水が飲みたいのかな」と声をかけながら、蛇口に手を伸ばす。手のひらがハトをつかめるくらいに近づいても、ハトは逃げない。やはり水を期待しているのだ。
蛇口をひねると水が思ったより強く跳ね上がった。それに驚いてハトは、すぐ下の地面に飛び降りる。僕は排水口のまわりに少し水をためてから、蛇口をしめた。
僕は少し離れて、ハトが水を飲みに戻るか観察しようと思った。と、その瞬間、誰かに声をかけられる。
「〇〇さん、今、ハトと話していましたね」
周遊路を後から歩いてきた知人に、すっかり見られていたのだ。僕は観念して、知人と肩を並べて歩き出す。知人には、以前カラス(カンタロウ)と話が出来ていることを得意げに吹聴していたのだ。知人は、それを嘘だと思っていたらしい。なるほど、そう思うのが当然だろう。
ただ、今、僕がハトに話しかけているのを目撃して、カラスとの会話が本当だということを悟ったのだという。
名誉回復の機会がどこに転がっているかはわからない。