大井川通信

大井川あたりの事ども

カラスと会話する(32、37日目)

32日目

今日も、林の中にはカンタロウはやってこない。池の周囲のたくさんのカラスに鳴きまねをすると、群れは騒いで飛び回りはじめる。すると、近くの枝に飛んできて、逃げないカラスが。いくら見ても区別がつかないが、カンタロウか。ニンゲンの言葉で話しかけると、しきりに首をひねっている。

しばらく向き合ったあと、カンタロウは10mくらい離れた高い木の枝に飛びうつる。僕もすぐに追いかけて真下に立つ。いつのまにかカラスの群れは四散して、カンタロウ一羽になっている。カンタロウは、明らかに小さな声で鳴き始め、本当に久しぶりに鳴きまね合戦をすることができた。

37日目

いつもの小高い林にいくと、二羽のカラスが少し離れてとまっている。最接近したわけではないが、逃げ出すそぶりもみせない。下の枝にいた一羽が、急に鳴きだすが、なんだかとても攻撃的な鳴き声だし、こちらの鳴きまねを待っているようでもない。やがて二羽は連れ立って飛んで行ってしまう。

林の中でサンドイッチを食べ、正拳突きと前蹴りをし、どんぐりの実を木の幹に投げて遊んでいると、今度こそ本物のカンタロウがやってきた。

カンタロウは毛並みがつややかで羽根に乱れがなく、たぶん若いカラスなのだろう。ハシブトガラスなのに小柄に見える。くりんくりんした表情で首を傾ける様子は、とてもかわいい。

枝移りしたカンタロウを追いかけて、枝の真下で、カラスの鳴きまねをしたり、ニンゲンの言葉で「かんちゃん、かんちゃん」と呼び掛けてみる。カンタロウは例によって、すぐ上の枝に飛び移るが立ち去るそぶりをみせない。こちらがバイバイといって去っていく。