大井川通信

大井川あたりの事ども

あの多摩歩きのガイドブックは・・・

福音館小事典文庫の「ことわざ辞典」も手に入れて、いよいよ僕が執着する子ども時代の本も少なくなった。何度も思い出して懐かしく思うような本は、もうあと一冊、といっていい。

僕は今、大井川歩きと称して地元歩きをやっているが、振り返ってみると、子ども時代から身近なところでお寺など地元の名所を見て回るのが好きだった。これは父親の影響だと思う。主な移動手段は自転車で、かなり遠い所まで出かけたこともある。地元は東京の郊外で、多摩(三多摩)とか武蔵野とか呼ばれている地域だ。

地元訪問でもガイドブックがいる。最初のそれは父親から譲られたものだった。コンパクトな新書サイズで、多摩訪ね歩き、とか三多摩探訪とかいったタイトルだったと思う。そのあと同じような本は何冊か手にしたが、やはり初めての本には愛着がある。市民図書館で繰り返し読んだ写真文集『滅びゆく武蔵野』はすでに手に入れている。

その本が便利だったのは、トピック事に同じ形式で簡潔にまとめられていて、掲載項目が多いところだった。それだけ探索の目標が多くなり、子どもなりに冒険が楽しめたのだ。

まず初めの頁の上半分に、表題と写りの悪いモノクロ写真がある。下半分から解説が始まっていたが、一項目せいぜい2ページくらいのコンパクトな分量だったと思う。

国立市の南養寺など他のガイドブックでは単独では扱われない身近な寺院が多く載っていたし、八王子の永林寺や町田の大泉寺など大きな寺院に遠征したのも、この本の記事に誘われてのものだった。寺社だけでなく羽村の堰(せき)やまいまいずの井戸などの旧跡の記事もあり、父親の蔵書だった時にはそれで家族でピクニックに出かけたりもした。

もうずいぶん前に国立の古本屋で一回見かけたのだが、古くて手が出せなかったと思う。消耗品のような実用書で類書も多いから、現物を確認できないネットでは探すことは難しい。題名を覚えていないのは致命的だ。

おそらく可能性のある方法は、多摩地区の公立図書館の郷土資料室のようなところで実物を確認することだろう。それでタイトルや出版社がわかれば、ネット古書店で探せないことはない。ようは本気をだすかどうかなのだ、と自分を励ます。