大井川通信

大井川あたりの事ども

ヤングアダルト本研究会を見学する

数年前、図書館司書の資格のための勉強をして、YA(ヤングアダルト)本というジャンルがあるのを知った。日本語の語感からは、何を表しているかはわかりにくい。簡単にいうと、中高生くらいをターゲットにする本の総称だ。

子どもの本というと、やはり小学生までが中心だ。大人の本だと、やはり大学生以上が想定読者層だろう。読書活動の推進のためにも、子どもから大人への過渡期である中高生への働きかけが大切である。ライトノベルなど、この世代を対象にした本の市場が拡大した流れを受けてのジャンル化であるような気もする。

地元のビブリオバトルサークルの仕事で、他市の図書館が主催するYA本研究会に行くことになったのだが、漠然と司書など大人たちの研究会なのだと思っていた。

ところが定例の研究会に参加してみると、中高生たちが主体の会であることを知った。基本的に月に一回程度の研究会では、10人程度の参加メンバーによるビブリオバトルが行われる。会議用机を囲んで座ったままのブックトークみたいなゆるいものだが、時間だけは計測していて、5分の終了はベルで教えてくれる。最後に紙で投票してチャンプ本を決めるところが、ビブリオバトルらしい。

このやり方はとてもいいと思った。ビブリオバトルほど参加者が構える必要がないし、ブックトークでの緊張感のない長話を回避できる。大人の紹介型読書会にこそ導入したい簡易なシステムだ。

この定例会でのビブリオバトルが、ヤングアダルト関連のおすすめ本のリストの作成作業となり、会報であるチラシや年間リストのパンフレットや図書館のYAおすすめコーナーがその成果物となる。だから、中高生たちは「選書委員」という位置づけだ。お世話係の大人は司書一名。

僕の地元の市立図書館にはない、とてもすぐれた仕組みだと思う。担当司書さんによると、単年度事業として毎年募集していたときは、子どもたちの参加は少なかったという。今は中学生から高校生まで年々継続して参加することを前提にした持ち上がり方式にしていて、これで参加人数が増えたようだ。固定メンバーの先輩たちが新規メンバーを迎える形になって、部活のような参画意識が生まれたのかもしれない。

高校生メンバーの一人がビブリオバトルの全国大会で特別賞を受賞したそうだが、その時の紹介本は西尾維新の『少女不十分』。僕が唯一読んだことのなる西尾作品であることに親近感を抱いた。

 

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