ソレハネ チョットネ オモシロイネ/イトサンがせっかちに口をはさむ
シゴト ツカレタナー/旭通りの映画館で働いているモッチャンが/甲高い声で/飛び込んでくる
ソファーに長々と身体を投げ出したヨシムラサンが/退屈そうにあくびをする
僕はテーブルの片隅で/メンチカツをかじりながら/ノートを書く
それらすべてを/ふだんほとんど口を開かないオノサンが/柔和なまなざしで/ながめている
1982年9月 東京都国立市中区1丁目 中央公民館青年室
あのころの出来事は/記憶のもやの中に沈みかけているけれども/今になって/彼らの姿と言葉はくっきりと浮かびあがる
パパ ダメデショ ダッテ ナンナンナンナン ナンナンダカラ
ふいに耳元でひびく/得意げな息子の声が/それに重なって
※青年室というたまり場を出て、20年くらいたってから書いたもの。次男は、三歳になっても言葉が出てこなくて、小学校低学年の頃も、話す言葉の半分くらいは意味が取れなかった。その時からさらに十数年たち、次男も、イトサンたちと同じような働く青年になっている。