大井川通信

大井川あたりの事ども

ホトトギスが鳴いた

5月16日の日中に、ホトトギスの初音を聞く。ほんとのことを言うと、先週くらいからそれらしき鳴き声をかすかに聞いていたのだが、まちがいなくホトトギスと認識できたのは初めてだ。手元のメモを見ると、昨年は5月12日、2015年は5月13日、2014年は5月18日とあるから、ほぼ5月中旬の今の時期なのだろう。

まず、馬場浦池の松の梢あたりに、ヒヨドリに似た飛ぶ鳥を見つける。ヒヨドリよりスマートな姿で、ヒヨドリほど波打たずに直線的に飛び去る。続いて、どこからか、ホッケッ、キョキョという特徴ある鳴き声が。

たいてい初音は、真夜中の窓で、寝静まった街を鳴きながら飛びすぎるのを聞くことが多かった気がする。「ほととぎす平安城を筋違(すじかい)に」という蕪村の句の真意がすとんとわかったのは、その時だ。碁盤の目のような街の区画を、ななめに横切るホトトギスの姿を大胆にとらえている。

平安貴族の間では、ホトトギスの初音を争って聞くのがブームだったそうだし、江戸時代には「目には青葉山ほととぎす初がつお」(山口素堂)の句が名高かった。決してきれいとか、美しいとかいう鳴き声ではないのだが、人の心を浮き立たせるような(時に不安にさせるような)力を持っているのは確かだ。