詩歌を読む読書会の課題図書。こんなことがなければ手に取る本ではないと思いながら読んでみると、意外な発見があった。
自由律俳句で有名な尾崎放哉(1885-1926)は、東京帝大法科卒のエリートで、保険会社に入社するも挫折し、結核を患ってのち、小豆島の寺の庵で世を去った。
小豆島は一昨年に家族旅行をしている。調べると、尾崎放哉の終焉の地は、僕たちが宿泊したホテルのほんの近くで、その時は庵の所属する西光寺を見たし、そのあたりの迷路のような街並みも歩いていた。その時は関心がなくて、尾崎放哉記念館に足を延ばさなかったのが悔やまれる。
ただ、立てこんだ街並みと、狭い入り江と、波一つなくベタっと動かない瀬戸内海の印象は残っているから、次の句の情景は想像できる。
「漁船ちらばり昼の海動かず」
「漬物石になりすまし墓のかけである」
大井川歩きで、古墳の石を庭石に転用した話も聞くので、墓石の欠片が漬物石に化けることもあるだろう。
「鳩に豆やる児が鳩にうづめらる」
公園で見かける情景。鳥好きとしては、鳩がトラウマにならないか危惧されるが。
「蛙蛙にとび乗る」
交尾の時期だろうか。カエルがカエルの背中にしがみつく。その様子を漢字二文字を縦に並べることで、巧まずして視覚的にも表現しているのが面白い。おっとこれは横書きのブログでは伝わらないか。