大井川通信

大井川あたりの事ども

カマドウマとゲジゲジ

子どもの頃使っていた小学館の『昆虫図鑑』を手に入れてページをめくっていると、昔実家でよく見かけた虫のことを思いだした。

よくトイレで見かけたカマドウマ。バッタの仲間だろうが、羽のない背中が丸く盛り上がっている姿は不気味で、好きになれなかった。つるっとした茶色の身体も、なんだか虫らしくない。

昔の実家にはふつうにいたけれども、トイレを水洗に改修してからは見かけなくなった。大人になってからの生活では、全く出会うことはなくなった。

実家の庭には、体長二センチくらいの小さなミミズのような細長い身体にたくさんの足がある生き物がいた。色合いはやや赤みががっていて、渦巻きみたいに丸くなる特徴がある。こう書くと不気味なようだが、とても小さいし、ふつうにたくさんいたので、気持ちわるいとは思っていなかった。

我が家では、この生き物を、ゲジゲジと呼んでいた。千葉出身の母親からの知識かもしれない。しかし、これが本当のゲジゲジではなく、ヤケヤスデという生き物であることは、図鑑で気づいていたと思う。しかし、この「ゲジゲジ」にも、大人になってから、ほとんどであったことはない。

図鑑でしかみたことのない本物のゲジゲジに出会ったのは、ごく近年のことだ。大井のひろちゃんに家の座敷を、足が異様に長いムカデのような生き物が悠然と歩いている姿を見つけたときは衝撃だった。