笠間書店の「コレクション日本の歌人選」を使って、詩歌を読む読書会で西行(1118-1190)を読んだ。38首の代表歌にしぼった注解が充実しているし、年譜等もあるから、西行についていろいろ知ることができた。
まず、西行が歌の世界の同時代のスターであって、自分の作品が世間に及ぼす影響を勘案した自意識がうかがえる作品があるのが面白かった。今でいえば、トップユーチューバーというところだろうか。
北面の武士として様々な分野で才能を発揮し、若くして出家も道を選んで周囲を驚かしたというのは、当時からしたら最先端の生き方だったのかもしれない。歌道と仏道を極め、民衆の救済という点で、のちの鎌倉新仏教の開祖たちの視点を先取りする一面があったというのも驚くべきことだ。
平氏とも源氏とも関係をもち(源頼朝とは対面している)、重源が行った東大寺再建の仕事を手伝うなど、その行動力は意外とダイナミックだ。激動の中世にふさわしい人物だったのかもしれない。
僕が選んだ3首は、どれも名高い作品になってしまったが、800年以上の時間をこえて、言葉が大胆に迫ってくるところがすごい。
年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜(さや)の中山
風になびく富士の煙(けぶり)の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな
心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮